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アメリカのニューヨーク・タイムズは11月5日、「北朝鮮がウクライナとの戦闘に初めて参戦、当局者らが明らかに(North Korea enters Ukraine fight for first time, officials say)」との記事を配信した。同紙の報道によるとロシア国内のクルクス州で、ロシア軍と北朝鮮軍が共同で小規模な軍事作戦を実施。その際にウクライナ軍と限定的な交戦状態に入ったという。
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とうとう北朝鮮の兵士がウクライナ軍と交戦した。おまけに戦死者が出たというのだから、日本に限らず世界中の人々が驚いたのは当然だろう。だが、軍事作戦の専門家は少し違った視点から「正真正銘の異常事態」だと指摘する。軍事ジャーナリストが言う。
「もしロシア軍がまともな軍隊だったら、北朝鮮から『我々は援軍を派遣できます』と提案されたとしても、即座に断ったはずです。普通、自軍だけで作戦を遂行するにしても、複数の部隊が進軍するだけで綿密な意思疎通が必要です。もし半分がロシア兵、半分が北朝鮮兵といった部隊を編成したとして、ロシア語と朝鮮語ではコミュニケーションが成立しません。1秒で生死が分かれる最前線の戦場で、指揮官と兵士、さらに兵士同士で会話ができないというのは致命的な欠陥です。これなら民間軍事会社のワグネルが採用した囚人兵のほうが、言葉が通じるだけまだマシだと言えるでしょう」
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とはいえ、戦争の歴史において多国籍軍は珍しくない。異なる国の軍隊が協力して敵軍と戦う場合、実は定石やセオリーといったものが存在する。仮に日本に敵軍が侵攻し、自衛隊とアメリカ軍が共に迎撃する場面を想定してみよう。
「この場合、例えば福岡県は陸上自衛隊、山口県はアメリカ軍が対応、というように完全な別行動を取らせるのがセオリーです。ベトナム戦争に参戦した韓国軍も、このやり方で南ベトナム解放民族戦線と戦いました。広島県の敵軍を陸自とアメリカ軍が共同で攻撃するにしても、それぞれの部隊は独立させ、日米の兵士を混ぜるということは絶対にしません。ちなみに、この場合でも陸自とアメリカ軍の指揮官は、英語か日本語で流暢に会話できることが求められます。やはり異なる国の軍隊が異なる言語で共に戦うというのは、それほど難しいことなのです」(同・軍事ジャーナリスト)
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ところがニューヨーク・タイムズの記事によると、索敵作戦はロシア兵と北朝鮮兵を混ぜた状態で行ったようなのだ。さらにCNNや中央日報は、北朝鮮の兵士がロシア軍部隊の指揮下に置かれる可能性を指摘している(註1と註2)。
そもそも北朝鮮の兵士は、自国の制服や武器でウクライナ侵略戦争に参戦しているわけではない。冒頭でご紹介した通り、ロシア軍の軍服を着用し、ロシア軍の武器が渡されている。
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だが、ロシア軍が北朝鮮軍の兵士に期待しているのは、人手不足の解消だけではなさそうだ。北朝鮮軍の兵士にとって最悪の未来が待ち受けているかもしれない。なぜならロシア軍は自分たちの代わりに北朝鮮兵に死んでもらおうと考えている可能性があるからだ。
「ニューヨーク・タイムズは『小規模な交戦』と表現しましたが、その内容から北朝鮮軍の兵士は『威力偵察』を命じられた可能性があります。これは実際に敵軍と交戦し、敵軍の戦力や装備を探る作戦で、危険な軍事行動であることは言うまでもありません。一般的には装甲車や戦車、ドローンなどを使って実施します」(同・軍事ジャーナリスト)
ところがロシア軍は訓練も装備も充分ではない北朝鮮軍の兵士を自分たちと共に行動させ、最前線で北朝鮮軍の兵士だけに威力偵察を命じた可能性があるという。
「ロシア軍部隊の指揮官は、北朝鮮軍の兵士が駆逐される様子から、ウクライナ軍の配置を偵察したのではないでしょうか。まさにロシア軍にとって北朝鮮軍の兵士は“捨て駒”、“人身御供”なのでしょう。ウクライナのアンドリイ・シビハ外相も17日に『ロシアは北朝鮮兵を大砲の餌食にするつもりだ』と発言しました。かつてロシア軍は囚人兵を大砲の餌食とし、ウクライナ軍の砲列を偵察しました。全く同じ作戦を北朝鮮軍の兵士に命令する可能性があるとシビハ外相は指摘したのです」(同・軍事ジャーナリスト)
デイリー新潮編集部
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