24/10/26 03:25:18.50 TJOdTtN8.net
■『キングダム』は大人気でも、現代中国は嫌われている
―本書については『中国ぎらいのための中国史』というタイトルが過激すぎるという声もあるようですが。
とんでもない。内閣府の調査によると現在の日本人の86.7%が中国に「親しみを感じない」そうですから、いまは日本人の圧倒的多数が
「中国ぎらい」。なので、この本のタイトルは「圧倒的多数の日本人のための中国史」と同じ意味ですよ。
ただ、中国が日本にとって厄介な国だからこそ、彼らの歴史を知る必要があります。
実は歴史は意外なほど現代中国の行動原理に影響を与えているので、中国史の知識は実用的知識なんです。
―日本人の9割近くが「中国ぎらい」のなか、一方では『キングダム』、『パリピ孔明』など、
古代中国をモチーフにしたコンテンツは人気です。このギャップをどう捉えていますか?
日本人の大部分が、近代以前の「伝統的な中国」と、問題だらけの「現代の中国」を、それぞれ完全に別物と捉えているからでしょう。
『キングダム』『三国志』のような伝統的な中華世界を描いた古典の世界は、一種の異世界ファンタジーの世界。
習近平が台湾海峡で軍事演習をおこなっている現在の中華人民共和国とは、切り分けられています。
実はこうした傾向は今に始まったことではありません。日中戦争が起きた1930年代には、現実の中国とは戦争状態なのに、
日本では三国志ブームが起きました。横山光輝の漫画『三国志』のモチーフになった吉川英治の小説『三国志』も、
この時期に発表されています。
ただ、注意したいのは、伝統的な中華世界と現代の中国に「別物」感があるのは、日本人の一方的な感覚でしかないことです。
一般には「中国は王朝が変わるたびに記録を焼き捨てるので歴史が残らない」とか、「文化大革命で伝統が全部破壊された」みたいな
珍説もありますが、これらも間違いか不正確です。もちろん文革の被害は深刻ですが、数千年以上の伝統を数年~十年の社会運動で
消滅させるのは不可能ですから。
中国人にとっては、古典中国と現代中国は何ら切れ目なくシームレスに繋がっている。
ここに日中間のギャップを解くカギがあるのです。
ー中略ー
■中国に関する「雑な議論」は危険
―中国と向き合う上で、現在の日本にはどんな問題があるのでしょうか?
こうして見ていくと、歴史を知らずに現代中国を語ることが、いかに不用意か分かるはずです。実のところ、日本の中国史研究は
相当な蓄積があるすごい分野なのですが、かつての日中戦争に協力したことの反省もあって、その知見が現代中国を語るために
使われない時代が長く続いてきました。
ただ、中国の国力が日本を上回って現実的な脅威になっている昨今、さすがに過去のタブーを脱してもいいような気がします。
また、中国に関して専門知にもとづかない粗雑な言説が大手を振るういまの言論空間は、明らかに不健全です。
中国は経済的な依存関係が大きい一方、軍事やインテリジェンスの面では明確な脅威でもありますから、いまの日本で「雑な議論」は
普通に危険でしょう。
中国の古典や歴史から、そこから現代中国を分析していくアプローチも、中国と対峙(たいじ)する上で必要なことだと思います。
安田 峰俊
全文はソースから
PRESIDENT Online 10/24(木) 18:17配信
URLリンク(news.yahoo.co.jp)