24/10/21 13:10:39.04 IE02SJRD.net
欧州経済を支える自動車産業が不振にあえいでいる。電気自動車(EV)の需要が伸び悩む中、中国製EVが市場を猛攻。
来年には欧州連合(EU)の環境規制が強化される予定で、3重苦の状態にある。
「2035年までに全新車をゼロエミッション車にする」というEU計画に、見直しを求める声が高まっている。
・中国、技術でも凌駕
パリで今月開かれた国際自動車ショーでは、中国製EVが話題をさらった。
中国最大手、比亜迪(BYD)の記者会見には千人近くが集まった。李柯(ステラ・リ)執行副社長は最新EVを紹介し、
「来年末までにハンガリー工場が稼働する」と欧州進出への意気込みを語った。
新興メーカー、浙江零?科技(リープモーター・テクノロジー)は1台2万ユーロ(約320万円)以下の格安EVが売り物だ。
欧州大手、ステランティスと提携し、同社のポーランド工場で6月に生産を開始した。
欧州の調査機関T&Eによると、EUのEV新車販売で今年、中国メーカーの割合は11%となる見込み。3年後には20%に達すると予測される。
EUは4日、中国製の輸入EVに追加関税を課すことで合意したが、中国勢は着々と欧州に生産拠点を設け、関税回避に先手を打つ。
中国勢は価格競争で欧州メーカーを脅かすだけではない。いまはハイテク自慢の高級EVに力を入れる。
BYDは今夏、パリのシャンゼリゼ通り近くにショールームを開設した。行ってみると、客でいっぱい。イタリア人客(64)は
「私は伊高級ブランドのEVも持っているが、BYDは航続距離が長く、バッテリー動力で勝る。デザインもよい」と語った。
店員に聞くと「月100台近く注文が入る」という。BYDは今年、仏国内の販売代理店を100店に増やす計画だ。
ドイツ世論調査では59%が「中国EVを買ってもよい」と答えた。40歳未満では70%超。
ドイツ紙記者は「EV化で、フォルクスワーゲン(VW)などの欧州老舗はブランド力を失いつつある。若い世代はスマホを買うように、
新しい機能に飛びつく」と指摘する。
・「期待の星」も…
欧州各社は「冬の時代」に直面する。
ドイツ最大手のVWは9月、国内工場の閉鎖を検討中だと発表した。87年前の創業以来初めてとなる。VW傘下のアウディは今秋、
ベルギー工場閉鎖をめぐって労働者ストが続いた。ステランティスも、イタリア工場の操業停止を迫られた。
EUにとって衝撃的だったのは9月、スウェーデンのEV電池大手、ノースボルトが雇用削減を決めたことだ。15年に発足した同社は、
EV生産で中韓製電池に頼る現状を脱皮し、欧州の自給体制を目指すEUの期待の星だった。削減人員は1600人で、従業員の2割に相当する。
欧州自動車工業会(ACEA)によると、8月のEV新車販売は前年同期比で44%減少した。ドイツでは政府の補助金制度終了に伴い、
7割減った。価格が高いことに加え、充電スタンド整備の遅れもある。EV需要の低迷は、各社に生産計画の見直しを迫った。
・米「対中封じ」との違い
中国EVに対し、米国は100%の関税をかけた。これに対し、EUの追加関税は最高35・3%。「公平な競争環境にする」という建前に
こだわった。ドイツを筆頭に中国と関係が深い国も多く、対応はおっかなびっくりだ。
BYDの広報担当者は「わが社はバッテリーから車体まで一貫生産できるのが強み。技術力があり、ハイブリッド車でも強い。
追加関税を課されても、競争に勝てる」と自信を示す。
EU環境規制は来年、新車のCO2排出量引き下げを迫り、実施できない企業に販売台数に応じて罰金を科す。EV需要が低迷する中、
欧州各社は総額150億ユーロ(約2兆4千億円)の罰金を科されると推計され、ACEAは「生産調整や雇用削減を迫られる」と警告した。
イタリアのメローニ首相は国内の自動車産業衰退に危機感を示し、「このままでは自滅」と規制見直しを求める。
EUはスマートフォンやAI(人工知能)、インターネットなどの新技術で米中に後れ、環境産業で巻き返しを狙った。
EVはそんなEU戦略の象徴だったが、目算は狂ってきた。(パリ 三井美奈)
2024/10/21 10:38
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