24/03/11 16:32:14.79 SlpkBVbM.net
■党主導の景気回復策には不安が残る
3月5日、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開幕した。今回の全人代で明確になったのは、これまでに増して政権による経済・社会の統制が強まったことだ。それは、李強首相の「習近平同志を核心とする党中央の指導のもと、全ての民族・人民が団結した」との政府活動報告にも表れている。今回は、これまでの慣行を破って全人代の閉会後の首相会見も廃止した。
その背景に、権力を政権に集中し党主導の政策運営体制の強化を図りたいとの意図があるのだろう。政権の統制の強化につながる法令や委員会なども増やした。本来であれば、低迷する景気の回復への政策が多く出されるべきだろうが、具体策の提示には不安を感じた専門家も多かったはずだ。
今後、景気の低迷が続くと、一般市民の不満が蓄積することも懸念される。不動産デベロッパーや、地方政府傘下の融資平台の不良債権問題は深刻だ。李強首相は外資誘致を積極的に促進する考えのようだが、統制型経済の状況では海外に脱出する企業は増えることも考えられる。また、中国を離れ海外移住を目指す人も増える可能性もある。統制強化によって、中国経済が個人消費主導型へとモデルチェンジすることは難しいだろう。
■「反スパイ法」の改正がそれを象徴している
近年、中国政府は党指導部への権力集中を強化してきた。今回の全人代は改めて、統制強化を徹底する政府の考えを確認する機会になった。2023年の法律の運用、各種委員会の設置、今回の全人代での報告内容を見ると、いかに統制強化を重視しているかが確認できる。
昨年7月、中国は改正版の“反スパイ法”を施行した。2014年に習政権は反スパイ法を制定し、国家の安全を脅かすとみなす外国人などを厳しく取り締まった。スパイ法の改正によって、取り締まりの対象は拡大した。国家の機密情報、安全保障に関する情報やデータを盗み取ろうとする行為、サイバー攻撃などがスパイ行為とみなされる。スパイの疑いがある人物の出国、疑いがある外国人の入国も認めない。
■「安全」を29回も繰り返した首相の真意
金融取引や言論も、反スパイ法の取り締まり対象になった。中国の国民や組織は、スパイ行為を見つけたら当局に通報しなければならない。全人代前の2月下旬、“国家秘密保護法”も改正した。反スパイ法、国家秘密保護法ともに違反対象の定義はあいまいとの見方もある。SNSで「景気の低迷が心配だ」とのつぶやき、外資企業による中国の需要調査なども摘発対象になるかもしれないという。
(略)
足許では、一般市民がより自由な環境を求め、海外を目指す傾向もみられるようだ。米国、カナダ、オーストラリア、日本、タイ、欧州などに移り住もうとする人は増えているという。2023年、南米経由で米国への密入国を試み、メキシコとの国境地帯で拘束された中国不法移民は前年の10倍に増えた。
■統制を強めるほど、ヒト・モノ・カネが流出していく
企業の海外脱出も増えた。それと同時に海外からの直接投資は減少した。2023年、外資企業の中国投資は過去30年ぶりの低水準だった。不動産バブル崩壊によるデフレ環境の鮮明化、需要の低迷懸念、“ゼロコロナ政策”で明らかになった予測困難な政策、台湾問題、人権問題など、外資離れ加速の要因は多い。本土ではなく海外市場での新規株式公開(IPO)を目指す中国の企業も増えた。
今回の全人代で統制強化が一段と明確になり、今後、海外移住を目指す中国人や海外移転を目指す中国企業は増える可能性がある。自由に活動できないとなると、人も企業もより自由な環境を目指すことになる。反スパイ法のリスクなどを回避するため、インドなど成長期待が高く人件費も相対的に低い場所に拠点を移す海外企業も増えるだろう。
全文はソースで
真壁 昭夫
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