24/02/23 08:51:42.90 t1OmWzFF.net
危機の原因は韓・キューバ国交正常化
北朝鮮の金与正・朝鮮労働党副部長は15日に談話を発表。日本が政治的な決断を下せば「両国は新しい未来を拓くこと」ができ、岸田首相が「平壌を訪問する日が来るかもしれない」との「個人的見解」を明らかにして、大きな注目を集めた。
北朝鮮は、内外共に危機的状況にある。これが、金与正副部長が「岸田首相への談話」を送った背景である。なかなか上手な談話文で、日本の新聞記者や解説記事、学者の分析は、目くらましの言葉に引っかかり、裏に隠された危機と真実に近づけない。「岸田の決意を見極めるため」との、トンチンカンなコメントもあった。これでは、北朝鮮の宣伝係と揶揄されても仕方がないか。
金与正談話の前日(14日)、韓国政府はキューバとの国交正常化を発表した。日本ではほとんど関心を呼ばなかったが、北朝鮮にとっては驚愕すべき事態だ。北朝鮮が国際社会で文字通り孤立してしまった事実を、確認する事件だった。
(略)
そんな体制の中で、金与正副部長は、正恩氏にいつでも面会でき、直言できる唯一の人物だ。金正日氏の娘で正恩氏の実の妹である。その彼女が「岸田首相」名指しの談話を発表したのは、初めてだ。その理由は、北朝鮮が困っているからだ。
これがわからないと、金与正談話は理解できない。与正氏はナンバー2の実力者だ。北朝鮮では、正恩氏に直接面会し、直言できる人物が実力者だ。それができるのは彼女しかいない。1988年生まれの35歳。スイスへの留学経験があり、独語、仏語、英語を話す。
(略)
キューバは、北朝鮮にとって「最後の同盟国」であった。同じように社会主義を標榜し、反米同盟を結成した仲間だった。砂糖を安価で供給し、ミサイルや兵器を購入し、違法ビジネスにも手を貸した。その同盟国を失ってしまった。
昨年末からの北朝鮮の戦略変化と国内の混乱は、キューバに「裏切られた歴史的事態」のためだったのだ。
北朝鮮は、昨年末まで韓国を「南朝鮮」と表記した。これは、韓国という国家は存在しないとの意味で、軍事統一には必要な表現だった。つまり、国家でない南朝鮮に対しては戦争ではないから「軍事統一」できるとの理屈だ。
正恩氏は昨年末に初めて「朝鮮半島に二つの国家がある」と語り、「大韓民国」と初めて、公式国名を述べた。昨年夏頃には『大韓民国』とカギカッコつきの表現があったが、これは「いわゆる大韓民国」の意味で、大韓民国を承認した発言ではなかった。
さらに、1月には与正氏が「尹錫悦大統領」と、正式名称で韓国大統領を呼んだ。これも、初めてのことだった。これらの金兄妹の発言は、北朝鮮が大韓民国を事実上承認したことを意味する。国家として承認すると、統一戦争は国際法違反だ。「内乱」との言い訳はできない。
国家崩壊に直面するとの危機感
韓国は、なぜ「大韓民国」と「尹錫悦大統領」との正式呼称を認めたのか。韓国や日本では、「韓国への軍事統一に戦略を変更した」との見方が広がったが、これは間違いだ。国際社会からの孤立を避けて国連制裁を解除させないと、国家崩壊に直面するとの危機感を、指導者兄妹は深めたのだ。
北朝鮮は、極度の経済難と食糧難に直面している。さらに、若者の間に韓流文化への憧れが広がり、国家の正統性への疑問が生まれている。
この危機を打開するためには、日朝首脳会談で日朝正常化による経済支援が必要だ。また、大韓民国を承認して南北首脳会談を実現し、南北融和を掲げ、国連制裁を解除させたい。そのためには、11月の米大統領選でのトランプ大統領の再選が不可欠だ。
このため内政、外交戦略の転換を図ったのだ。だが、その実現は簡単ではない。昨日までは「大韓民国」と言ったら逮捕されたのだから、国内の混乱は避けられない。拉致問題の解決なしには、日本は支援できない。国連制裁も核開発を進める以上解除できない。
岸田政権がいつまで持つのかわからないのに、岸田首相に「訪朝」への誘導談話を出さざるを得ない事態は、北朝鮮の危機を雄弁に物語っている。
重村智計(しげむら・としみつ)
URLリンク(www.dailyshincho.jp)