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「2010年ごろは台湾有事のシナリオを話すのは不可能だった」
今話題になっている台湾有事の報告書「次の大戦の最初の戦い」を作成したアメリカの戦略国際問題研究所の日本部長クリストファー・ジョンストン氏が日本経済新聞のインタビューで述べた言葉だ。確かに、この10年ほどで日本の世論は驚くほど変化した。口にすることさえ憚られた「台湾有事」という言葉どころか、台湾有事=日本有事という命題にさえ異を唱える声は激減し、直近では、日本の参戦が当たり前のように語られる。
冷静に振り返ってみよう。日本は、1972年の日中共同声明までは、中華民国(台湾)と国交を結び中華人民共和国(中国)は国家として承認すらしていなかった。しかし、この共同声明で、中華人民共和国を中国唯一の合法政府と認め、台湾が中国の不可分の領土であることを理解し尊重すると約束した。そして、台湾を見捨ててこれと断交したのだ。この時から、日本にとって、台湾の中国本土への統合は中国の国内問題となった。現在は、米国はじめ世界のほとんどの国も同様の立場をとる。だから、台湾は国連にも加盟できない。
そうした事実を前提にすれば、世界中でアメリカ以外に、台湾統合をめぐる紛争に参戦しようという国がないのはある意味当然だ。冒頭の報告書も、「アジアの学者たちは、ほとんどの国が中立を保つだろうという評価で比較的一致している」とし、韓国でさえこの戦争には参戦しないことになっている。
それにもかかわらず、このレポートの「基本シナリオ」は、日本だけは参戦することを想定している。何故そうなるのか。
この戦争では台湾、米国と並び「日本が要」であると書かれている。日本は、(拒絶する権利はあるが)米軍による基地の使用を認める必要がある。それがなければ、米国は多数の戦闘機・攻撃機を使うことができないからだ。日本がこれを拒否することは、70年にわたる日本の安全保障政策を支えてきた長年の日米同盟を崩壊させる危険性があるとの記述もある。これが最も重要な点だ。
この戦争は、中国のミサイル攻撃で始まる。米国は直ちに参戦するが、その対応の大部分は日本の基地から行われる。日本は当初は中立の姿勢をとるが、在日米軍基地が攻撃されるので、その時点で参戦する。日本は強大な軍備を有する。参戦後の自衛隊は国外における攻撃作戦まで行うという想定になっている。
もう一つ重要なのは、この戦争で、米軍は270機、日本は112機の戦闘機を失うが、そのほとんどは「地上戦」による。空中戦ではなく、基地に駐機中にミサイルで爆破されるのだ。ミサイルが雨あられと日本の領土に飛んでくることが想像できる。民間の被害に言及はないが、誤爆や迎撃して落としたミサイルで基地周辺に大きな人的・物的被害が出るのは誰にもわかる。日本が本格的な戦場になるのだ。
中国の国内問題に介入し、日本が戦場になるという理不尽なことが起きる原因は、日米同盟だ。これを守るために基地使用を断れないと言う。
日本の国民を守るための日米同盟だったはずが、日米同盟を守るために日本国民が殺される事態に陥った。今こそ、その矛盾に気付くべきだ。
URLリンク(news.yahoo.co.jp)
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