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元記事
毎日新聞2018年10月16日 地方版
香山リカのココロの万華鏡
中国語を習う本当の理由
URLリンク(mainichi.jp)
昨年から新しい病院でときどき診療しているのだが、そこには中国人の患者さんが多く来るので、この機会にと思って中国語を習い始めた。
患者さんは日本語を話すことができるし、旅行者の場合は通訳の人も同伴するから基本的に中国語は必要ないのだが、少しくらい話せるようになりたいと思ったのだ。
ところが、多くの学習経験者が言うように、中国語は発音がとても難しい。同じ音でも調子を上げたり下げたり何通りも読み方があり、間違うと意味が分かってもらえない。
一つの単語を話そうとして、先生から「違います。それも違う」と言われて何度も言い直すこともしばしばだ。
まわりの友人に「中国語を習っている」と言うと、「えー、これから新しい言葉は無理じゃない?」と笑われることもある。「いまはスマホにも翻訳機能がついているんだから、
それを使いこなした方がいいよ」と言っていろいろ教えてくれる人もいる。
みんなが心配した通り、私は発音に苦労し、「入門講座」のテキストの10ページ目あたりからなかなか先に進めない。やっぱり中国語はあきらめようかな、と思っているときに、
あるフランス人と話す機会があった。その人は語学の達人で、英語や中国語のほかにアジアの言葉がいくつか話せるらしい。学び始めたばかりという日本語もかなり上手。
私は思わず「中国人の患者さんが来るので中国語を習い始めたのですが、全然うまくならなくて」とグチを言ってしまった。するとその人はにっこり笑って、
こう言ったのだ。「異国で体調を崩して病院に来た人は、お医者さんが少しでも母国語を話してくれたらどんなに安心するでしょうね」
そうか、と私は気がついた。私だってもし遠い国に旅行して調子が悪くなって病院に行ったときに、そこの医者が「コンニチハ」と日本語であいさつしてくれたら、
それだけでホッとするに違いない。うまい、下手はこの際、関係ないし、ごく基本的ないくつかのフレーズを身に着けていればいいのだ。高望みをする必要はない。
グローバル社会とはいえ、国によって地域によって、言葉も違えば文化も違う。それを少しでも学んで、そこの人に会ったときに「知ってますよ」と伝えることは、
21世紀のいまも大切なのだ。そう思ったらとたんに中国語のレッスンが待ち遠しくなってきた。さて、どれくらい話せるようになるのか。またいつかこのコラムで報告したい。
(香山リカ 精神科医)