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夜這いの風習は昭和30年代まで存続 大切な仕組みだった 2016.11.25 16:00
性の歴史を学ぶ中、本誌は1冊の興味深い本を発見した。タイトルは『よべこき―
奥会津の秘められた民俗―』(デザイン広報社)である。「よべこき」とは福島県奥会
津では「夜這い」を意味するという。奥会津博物館研究員の渡部康人氏が「よべこき」
についてこう語る。
「夜這いに関する資料としては、昭和26年に出版された柳田国男監修の『檜枝岐民
俗誌』があります。この書には娘が一人前の女性になった時には、男性が人目に触
れずに通いやすい部屋に娘を移動させるとか、将来の婿として好ましい青年は積極
的に世話するといった話が書かれています」
元天理大学文学部教授で民俗学者の飯島吉晴氏によれば、夜這いの風習は地域
によっては昭和30年代まで存続していたという。「男女が自主的にパートナーを選
ぶ、自由恋愛のシステムです。いきなり女の部屋に押しかけるのではなく、祭礼など
で意気投合した相手に忍んでいきました。夜這いを受ける女性はもちろん、女性の両
親も了解済みということが多かった」
また、佛教大学歴史学部教授の八木透氏によれば、夜這いは社会身分や貧富の
格差が大きい村では盛んにならなかったという。「男女の自由恋愛ですから、家同士
の関係がフラットな地域で発達しました。若者集団である『若者組』が実質的に夜這い
を管理していて、女性側にも拒否権があり、セックスを強要するものではなかった」
夜這いというと現代では何か猥褻で淫蕩なイメージがするが、本来は村の若者たち
の結婚を促進し、出産を通じて農村の働き手を生むための大切な仕組みだったので
ある。
週刊ポスト2016年12月2日号