17/07/01 01:31:21.79 CAP_USER.net
(>>1の続き)
空母カール・ビンソンを始めとする一連の軍事デモンストレーションも、習近平の背中を押す効果があったのは間違いない。
本来なら、東シナ海に米空母打撃部隊が入って、勝手気ままに振る舞うのは中国にとっては許しがたい。自らのA2/AD戦略(接近拒否/領域拒否戦略)を土足で踏みにじられるようなものである。「アジアの事はアジアで処理」という「新型大国関係」を基軸とする中国の外交方針にもそぐわない。
また、中国は「海洋国土」という独自の概念を主張してきた。排他的経済水域でも軍事演習は許可を必要とするとの考え方だが、東シナ海に米国海軍艦艇が我が物顔で入り、行動するのは、その「海洋国土」を全否定されるのに近い。
だが、朝鮮半島非核化という大義名分の前には大っぴらに反対はしづらい。米国に届く核ミサイルの実験阻止というのは米国の自衛措置でもあり、これにも異を唱えにくい。トランプは今回、そこをうまく突いた。「もっと圧力をかけて核実験をやめさせよ。さもなくば米国単独でやる」というトランプ発言は習近平にとっては恫喝に近かった。
習近平は「北の核開発は反対だ」と言いつつ、「緊張を高めるような行動は控えるべきだ」と述べるのがやっとだった。トランプは予想を超える交渉巧者のようだ。
軍事を知らないメディア
トランプ政権による突然のシリア空爆に日本メディアはビックリ仰天した。
それに続く空母カール・ビンソン率いる空母打撃群の北上などの軍事行動には、案の定「すわ戦争か」と条件反射的に狼狽し、過剰な報道を連日垂れ流していたが、米軍が本当に攻撃を実施するかどうか、最もわかりやすいメルクマールは、NEO(Non-combatant Evacuation Operation)、つまり「非戦闘員退避作戦」の開始である。
韓国には現在、観光客を含め米国市民や軍人家族(軍人を除く)が10万人以上滞在しているというが、事実上の人質状態である。米国が北朝鮮に手を出せば、「ソウルを火の海にする」と北朝鮮は公言しているからだ。
4月16日、ヒル元米国務次官補も「韓国には、北朝鮮の大砲の射程に約2000万人が住んでいる」とテレビ番組で指摘している。
この時期、NEO「非戦闘員退避作戦」は開始されておらず、韓国への渡航制限も実施していなかった。このような状態のまま、マティス長官やマクマスター補佐官が北朝鮮攻撃を大統領に進言することなど、先ずありえない。
また1個空母打撃部隊と在韓米軍、在日米軍の兵力で北朝鮮を攻撃するのは明らかに兵力不足である。北朝鮮攻撃はシリアとは状況は全く異なる。
38度線に集中する数千の火砲(多連装ロケット砲や長射程火砲など)はソウルを向いている。ソウルを「火の海」にしないためには、開戦初頭でこれらを一挙に無力化しなければならない。同時に、核施設や核貯蔵施設も完全に破壊しなければならない。これには兵力不足なのだ。
朝鮮労働党の金正恩委員長を直接狙った「斬首作戦」をやるのではと主張する専門家もいたが、これは言うは易いが実行することは非常に難しい作戦である。リアルタイムで金正恩本人の所在を把握できることが作戦の前提だが、この情報は偵察衛星では得られない。
2006年、アルカイダ系のザルカウイ容疑者を「斬首」した時のように、側近に裏切り者がいて、金正恩の行動が逐一把握できなければ、作戦の成功はおぼつかない。
また、斬首作戦は一回のチャンスしかなく、失敗が許されない。失敗すれば北の独裁者に口実を与えることになり、金正恩は直ちに「火の海」「核攻撃」を命ずるし、金正恩は地下に潜り斬首作戦は更に困難となるからだ。
いずれにしろ、北朝鮮への軍事行動はそう簡単ではない。北朝鮮はシリアとは違って「ちょっとだけ懲罰を」という作戦はあり得ないのだ。
今後、金正恩はどう出るか
閑話休題。さて、今後である。北朝鮮は今のところ核実験は控えている。5月14日、北朝鮮は新型と思われる中距離ミサイルの発射実験を成功させたようだ。一方、米本土まで届くICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験はいまだ実施していない。
トランプ政権の狙いは、米本土に届く核とICBMが完成することを阻止することである。そのため、とりあえずは核とICBMの実験中止が最大課題となる。
今回、習近平はトランプ流の巧妙な「手口」に翻弄されながらも、水面下での強い対北説得工作を展開しているようだ。もし核実験を行えば、中国は原油供給の制限を含む国連制裁決議に賛成すると繰り返し警告している。
(続く)