17/02/26 20:32:20.59 CAP_USER.net
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■釣り合わない「成果」と「ダメージ」に頭を抱える専門家たち
金正恩氏が偏執狂だからという国情院の判断は、本来なら「本当だろうか」と疑われるような話である。それでも、そんな報告が出るのは「金正男殺害によって達成されたと北朝鮮が見なせる成果と、事件によって北朝鮮が被った外交的ダメージの大きさを比較すると、とても釣り合いが取れない」(小此木政夫・慶応大名誉教授)からだろう。
金正男氏を排除することで金正恩体制が得ることになるメリットは、前述した通り少なくとも客観的な観察では見当たらない。一方、事件によって引き起こされた波紋の影響は深刻だ。
長年の友邦であるマレーシアやインドネシアとの外交関係は危機にさらされ、米国や中国など関係国を中心に国際社会にも極めて強いマイナスのメッセージが発信された。このギャップを埋められないから、専門家は頭を抱えてしまっているのだ。
こういう状況では、このギャップを埋めるために様々な憶測が飛び交うことになる。北朝鮮の内情など確認不可能だし、「可能性がある」という書き方なら絶対に誤報とはならない。そのために普段から北朝鮮報道は真偽の見極めが難しいのだが、こうした状況では「書いたもん勝ち」と考えるメディアが出てくるのは避けられない。
金正男氏が脱北者の亡命政府に担がれようとしていたという話も、この一種だろう。韓国では脱北者団体が乱立しており、大きな連合体を作ろうという求心力は見受けられない。
脱北者の亡命政府というもの自体が、とても成立するとは思えないのである。たとえ設立を宣言する人々がいたとしても、意味のある活動をできるとは考えられない。しかも、3代世襲の金正恩体制に反対するのであれば、そもそも金正恩氏の兄を首班に立てようとする時点で自己矛盾に陥ってしまう。
さらに、亡命政府ができたとしても韓国政府の支援など期待できない。統一は韓国主導で行われなければならないと考える韓国政府にとって、亡命政府など邪魔な存在でしかない。韓国統一省は事件と関連して亡命政府説が流れた時、「亡命政府(構想)は一部脱北者の逸脱にすぎない」と切り捨てた。
事件直後に行われた金正日生誕75周年を記念する大会で「指導者の継承問題を完璧に解決した」と金正日氏をたたえる演説があったことを、事件と結びつける報道もあった。北朝鮮の事情に詳しい関係者が「事件成功を祝ったのだろう」と見ている、といったような具合だ。
しかし、これは北朝鮮が何年も前から数えきれないほど繰り返し言ってきたことだ。どうして今回だけ事件と関連してしまうのか理解に苦しむ。
さらには「金正恩氏が自らについて、怒れば兄でも殺すほど手ごわい人間だと米国にメッセージを送ろうとした」という説まであるらしいが、この説に同調する専門家は見たことがない。失笑交じりに「米国は核問題を交渉する相手だというのが北朝鮮の考えだ。
今回の事件が結果的にトランプ政権の対北朝鮮認識に影響を与える可能性は否定できないものの、北朝鮮にとっての対米メッセージはあくまでも核実験や弾道ミサイル発射だ。日米首脳会談に合わせたように弾道ミサイルを発射したことでも、それは分かる。暗殺事件で怖さを演出するとは思えない」と話す人ばかりだ。
似たような話で、国民向けに「金正恩氏の怖さ」をアピールするという考え方もあるようだ。しかし、そもそも金正日氏の家族情報は機密扱いだったから、一般国民は金正男氏の存在自体を知らない。だから、国民向けに金正恩氏の無慈悲さを示す材料に使うこともできないのである。