16/03/22 22:25:08.49 CAP_USER.net
(>>1の続き)
「ヘイトスピーチ、ちょっと最近ひどすぎる。大阪は在日韓国人が多い土地柄。対応策を考えよと関係各局に指示した」。平成26年7月10日、市長会見でこう表明したのだ。この2日前、大阪高裁がヘイトスピーチをめぐる判決を言い渡していた。
「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の会員らが21年12月~22年3月、当時の京都朝鮮第一初級学校が近くの公園を運動場代わりに不法占拠しているとして、
拡声器を使って「朝鮮人を保健所で処分しろ」「朝鮮学校を日本からたたき出せ」「ゴキブリ、ウジ虫、朝鮮半島へ帰れ」などと周辺で街宣活動したケースを「人種差別」と認定、賠償を命じる判決だった(26年12月確定)。
橋下氏は同年10月、当時の在特会会長と市役所で公開面談に臨んだ。
「ディベートの達人」として幾多の敵を論破してきた橋下氏が売り言葉に買い言葉の状況に陥り、「お前みたいな差別主義者は大阪にはいらない」「うるせぇ」「勘違いするな」などと感情的な発言を繰り返した。
在特会会長からの「何がヘイトスピーチに当たるのか」「朝鮮人は朝鮮半島に帰れというのは一つの意見。何が悪い」といった質問に「民族をひとくくりにして言うな」という以外、明確に答えないまま10分弱で自ら討論を打ち切る形になり、
インターネットでは「橋下完敗!」との声が上がった。
ヘイトスピーチ議論の入り口に当たる定義一つとっても一筋縄ではいかない難しさが浮かび上がった。
「日本人へのヘイトスピーチも対象」
それでも市による対応策の検討は続けられた。市人権施策推進審議会が弁護士や法学者、ジャーナリストらによる部会を設置して約半年間審議。
27年2月に答申を受けた市は、表現の自由に配慮し「ヘイトスピーチを禁止する」といった事前の直接的規制はせず、事後に認定した場合に団体などの名称を公表する間接的措置とする条例案を策定した。定義も審議会の意見を踏まえた。
市議会の審議では、表現の自由との関係や規制対象の範囲に質問が集中した。
維新市議「憲法が保障する表現の自由など権利にかかわるだけに、慎重に慎重を期すことが重要」
自民市議「(規制が)事後的とはいうものの自由な言論を萎縮させかねないのでは」「対象が外国人に対するものに限られているのか」
公明市議「審査会が公平・中立性を担保できるのかどうか危惧もある」
与野党からの意見や質問に対し、市は「審査会では慎重に判断する。その場でヘイトスピーチと即断して制止するようなことは想定していない」「審査では弁明や反論の機会を設ける」と慎重運用に徹する姿勢を強調した。
外国人に対する表現ばかりが規制される-との懸念に対しても「対象は外国人に限られていない」と答弁。日本人に向けたヘイトスピーチも規制対象になると明言した。
市担当者は取材に対し「あくまで人種や民族を理由とした差別的な言動を抑制するもので、正当な理由に基づく評論や言論は条例の対象にならない」と明示している。
特定の人種や民族を理由に「殺せ」「死ね」といった罵詈雑言を繰り出すのは明らかにヘイトスピーチに当たる。
ただ例えば、「日本軍の性奴隷にされた」と訴える元慰安婦と支援者や、竹島を自国の領土と言い張る韓国の政治家・団体、拉致被害者を帰さない北朝鮮の政府関係者らを念頭に、
正当に批判する流れの中で「韓国・朝鮮人はうそをつくな」「歴史捏造はやめろ」「在日の特別永住者制度を見直せ」などとデモや集会で言及した場合、ヘイトスピーチに当たるかどうかどう線引きするのか。
少なくとも規制を求めてきた側はヘイトスピーチだと糾弾するだろう。
抑止の実効性はない?
有識者は条例化をどうみるのか。
かつて朝鮮大学校の学生へのヘイトスピーチに関する人権救済申し立ての代理人を務めた師岡(もろおか)康子弁護士は「人種を理由に『殺せ』『出て行け』というようなヘイトスピーチを許さない、と行政が明確にしたことに意味がある」と条例化を歓迎する。
「そもそも日本も加盟している人種差別撤廃条約に『いかなる個人、集団または団体による人種差別も禁止し、終了させる』と規定されている」と指摘。
既存の法令で取り締まればいいとする反対意見に対し、韓国人一般など集団に対するヘイトスピーチはどれだけ脅迫的であっても違法行為とすることは現行法では難しい-として、条例の意義を強調した。
(続く)