15/08/22 15:01:55.38 .net
(>>2のつづき)
◇偏った歴史観 片りんのぞく 保阪正康・作家
「評価できる」という論評を耳にする。本気でそう思っているとしたら、日本人のメンタリティーが疑われ
る。「侵略」「反省」など四つのキーワードが入っている。けれども主語、文脈が不明確ななかで、
盛り込まれただけだ。何より問題に思うのは、歴史的普遍性に堪えられる「談話」になっていない点
だ。
戦争の原因について、欧米諸国による「植民地経済を巻き込んだ経済のブロック化」に求めている。
それに対抗して日本は「力の行使によって解決しようと試みた」としているが、満州事変、日中戦争、
そして太平洋戦争はそれだけが原因なのだろうか。違う。日本国内の軍事ファシズム、超国家主義
思想の台頭があった事実、経緯が全く説明されていない。これが安倍晋三首相の「認識」だとする
と一面的すぎる。2006年、靖国神社の展示施設「遊就館」の展示をめぐって米国が抗議したこと
があった。日米開戦を「自衛戦争」と強調する説明内容に、米側は一方的だと論じたわけだが、談
話の歴史認識には遊就館的な偏った歴史観の片りんがのぞく。
戦争の原因について「経済のブロック化」と規定してしまったゆえに、謝罪についてもその方向性と軌
を一にする。中国、韓国といったアジアの国々は日本の軍事ファシズムの犠牲になった側面が強い。
そのことを思えば、違和感を覚える。今回、日本軍に捕らわれた元捕虜のことにも触れられたが、欧
米諸国の捕虜のことであり、中国などアジアの国々のそれではない。総じてアジアへの視点は恐るべ
きほど欠落している。
「謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」とも言う。論理が逆立ちしている。本来は、史実を
見つめたうえで、謝罪については次の世代に任せる、ということではないか。全体に言えることだが、
「宿命」だとか自己陶酔的な言葉で飾り付けているだけで、どこか傍観者的な感じが否めない。
ある面、歴史修正主義を思わせる内容だ。戦争原因の偏った分析だけでない。過去、現在、未来
を同列で語っていることもそうだ。「植民地支配から永遠に訣別(けつべつ)」とうたう。いま、植民地
主義を掲げている先進国はない。むしろ、欧米の植民地支配を想起させ、日本の戦争を正当化し
たいというような意図も見え隠れする。「アジアやアフリカの人々を勇気づけた」とする日露戦争への
評価もまた、韓国などには異論があるだろう。
結語で、積極的平和主義の旗を掲げるとも語った。だが、「価値を共有する国々と」の前提付きだ。
中国を意識しているのだろう。けん制しているようにも感じられる。その意味では、外交的な計算で
書かれたものだとも言えるだろう。
安倍首相が談話を発表した翌日、天皇陛下は戦没者追悼式で「深い反省」という言葉を使った。
天皇陛下は「昭和の戦争」の追悼と慰霊の旅を続けている。それだけに言葉に込められているメッセ
ージは行動と一体化して聞く者の心に届く。安倍首相の70年談話は、戦後50年の「村山談話」の
3倍の分量という。翻って??というわけでないが、私の耳には3倍空虚に響いた。
【聞き手・隈元浩彦、写真も】
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◇米・中・韓の反応
14日に閣議決定された「談話」は、米政府が「歓迎」の意向を表明する一方で、中国のメディアは
「村山談話に比べて後退している」と論評した。今回の談話で「韓国」の文言が出てくるのは他の
アジア諸国と併記された1カ所だけだったが、韓国の朴槿恵(パククネ)大統領は「注目する」と一定の
評価をくだした。共同通信が14、15両日に実施した電話世論調査によると、「評価する」との回答
は44.2%、「評価しない」は37%だった。
おわり