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西日本新聞 7月6日 0時59分配信
国のエネルギー政策によって廃棄された島
「国に翻弄された島民の歴史知って」軍艦島元島民の坂本さん 世界遺産登録に涙
「明治日本の産業革命遺産」で最も人気を集める長崎市の端島炭坑(軍艦島)をいち早く「世界遺産に」と声を上げたのは元島民の坂本道徳さん(61)=長崎県長与町=だった。
坂本さんは5日夜、同市内で記者会見を開き「夢がかなった」と涙を流して喜んだ。2003年から続けてきた運動が実り「軍艦島は国のエネルギー政策によって廃棄された島。
登録を機に、翻弄(ほんろう)された島民たちの歴史を知ってほしい」との気持ちを新たにした。
捨てたはずの故郷が
1966年、小学6年の時に家族で島に移り住み、高校卒業まで過ごした。閉山から25年後の99年、中学同窓会で島を訪れた。
去った時のままの郵便ポストや、残されたノート、教科書…。当時45歳。郷愁が頭の片隅から離れなくなった。
「閉山で捨てた」という故郷を、その後もたびたび訪問。そこで出会った若者との会話やインターネットを通じ、島が廃虚として注目されていると知った。故郷を残したいと、会社を辞めNPO法人「軍艦島を世界遺産にする会」を設立。
資料収集やシンポジウム開催に奔走する傍ら、軍艦島の周遊・上陸ツアーのガイドを2千回以上務めた。
これが人のいない音なんです
「国に翻弄された島民の歴史知って」軍艦島元島民の坂本さん 世界遺産登録に涙
端島を目の前にして写真やビデオ撮影をする周遊ツアーの参加者。行政などの観光活用への期待は高い=2004年1月4日、長崎県高島町
「写真を撮るのをやめてください」。
上陸ツアーの最後、坂本さんは必ず、こう観光客に呼び掛け、船のエンジンを止める。10秒ほどの沈黙の後、続ける。「これが人がいない音なんです」
明治以降、国内外の石炭需要をまかない、戦前戦中は鉱員たちが厳しい労働環境の中でも働き続けた。朝鮮半島や中国の出身者も一緒に働いていたと聞いた。
戦後はエネルギー政策の転換で島民は退去を余儀なくされた。「人間のエゴイズムが詰まっているんです」
これからも坂本さんはガイドを続ける。「上陸者には島の向こう側にある歴史、環境、資源の問題を考えてほしい。観光のための世界遺産ではないはずだ」
=2015/07/06 西日本新聞=
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