16/07/10 08:52:08.24 2ZIAHtx9.net
「しかもハンス、それは人間の発育状況だけじゃないのだ。人類と社会のあらゆることが、未来には、
そのように両極端に分かれてしまうのだ。
たとえばカネだ。一方には腐るほど大量のカネを持ち、
広く高価な土地を持ち、労せずして限りなく肥っていく階級が現われる。
貴族とか新しい中産階級とか言ったのはその意味だ。
だが少数の彼らが現われる一方、他方の極には、何をどうやっても絶対に浮かび上がれない連中も現われるのだ。
それはカネだけの問題でもない。より正確にいえば、精神の問題だ。
限りなく心が豊かになっていく精神の貴族、精神の新しい中産階級が現われる半面、
支配者が笑えと言えば笑い、戦えといえば戦う『無知の大衆』、『新しい奴隷』も増えていくのだ。」
「人間だけではない。国もそうだ。恐ろしく豊かな、労せずして肥っていく国が現われる。
他方、何百年かかっても絶対に払いきれないほどの借金をかかえ、水一杯すら容易に飲めない国も現われる。
気候もそうだ。とほうもない旱魃(かんばつ)や熱波におそわれる国と、
寒波や洪水におそわれる国が出る。
災害におそわれつづける地域と、楽園のような地域、
人っ子一人いなくなる荒地と、無数の人間が鼻をくっつけ合って生きる都会とに分かれる。
愛もそうだ。特定の男女にだけ、愛と肉体の快楽が集中する。
一方、一生に一度の真の愛も快楽も得られない男女も増える。
要するに、土地や金や支配力を得る者は、ますますそれを得、
支配される者はますます支配されるだけになる。
そうだハンス、それが未来なのだ。私の見た未来だ。未来はそうなるのだ……」
「それは1989年だ。そのころ実験は完成する。
人間は完全に2つに分かれる。そこから引き返せなくなる。
そうだハンス、その完成と更に新しいアプライゼ(スタート)の時期が1989年4月に来るのだ。」