21/12/13 17:15:02.05 .net
「カーニヴァルだったね」
土曜日は会社が休みだったが、朝九時頃に支社の内務課長から
目黒のマンションの自宅に電話がかかって来た。
早速、東京の本社総務部長室へ。本社総務部長の二人が、向かい側に座って、
直ちに事実確認が行われ、調査の結果、この8年間で、持田が、不正に引き出した
総額は2億8千万に上る事が指摘された。
「2億8千万もの金を、君は一体、何の為に使ったのかね」と本社総務部長の一人から
顔を歪められ詰め寄られた。「会社の為に使ったんです」と持田は落ち着いた口調で
答えた。訊ねた本社総務部長の一人は荒げた口調で「なんだって! ふざけた事言うな!!」
「全額会社の為に使った金です」「いい加減なことは言うな!」
「事実を言っているだけです」
「会社の為に使ったというなら、証拠を見せてもらおうか」
「会社の労使問題が協調を前提に円滑に保持されるようになったじゃないですか」
「労使関係と君の使い込みが、一体どういう関係があると言うんだ」
京橋支部長を務める持田は一日置きに銀座に通ううち、いつの間にか銀座では
彼の顔を知らぬ者はいない銀座では名の知れたちょっとした有名人になっていた。
京橋支部の成績は1年に80億から90億という抜群の契約実績を上げていた。
交際費枠や接待費が無しの支部で、8年前から持田は、あるやりくりに手を染め、
8年間に四百億近い契約を集めていたが、銀座でその間に使った額は、いつの間にか
2億8千万にも膨れ上がっていた。返すつもりだった金額は、いつの間にか
返せない額に達していた。
いずれはバレる運命にあるとはいえ、持田の苦しいやりくりも、ついに表面化したのだった。