21/11/19 16:56:47.27 .net
「時は流れて」
「オヤジ! いつもの頼むよ」
「あいよ! いつものだね」
異動が多い仕事の関係でこの街に来て早いもので、もう3年目になる。
ここの居酒屋は仕事帰りに、いつも立ち寄るようになっていた。
ここの居酒屋の雰囲気をカウンター越しでいつも楽しんでいた。
後方では若いOLのガールズトークに花を咲かせている。
「美咲ってさ、好きな人とかいないの?」
「いますよ。もちろん」
「えっ! 誰々? もしかしてさ、いけない恋?」
「違いますよ」「藤崎君はダメだからね」
「あいよ!海老天。いっちょ上がり」
俺の前に差し出される海老天。ここの看板メニューの一つでもある。
「はい!生ビールね!」
「あっ、どうも」
俺は軽く会釈をして生ビールのジョッキを居酒屋の主人から直接頂く。
運命の悪戯か、奇妙な巡り合わせで、なんと…
そんな居酒屋に、実は10年前に別れた彼女がカウンターから少し離れたテーブルで
ひとり酒に酔いしれていた事を知る由もなかった ―――――