中島みゆきの名曲at MJSALOON
中島みゆきの名曲 - 暇つぶし2ch111:Track No.774
21/12/31 11:36:27.91 .net
「ヘッドライト・テールライト」
高層の本社ビルの最上階の窓の外を眺めていると、知らぬ前に横田が立っていた。
「なんだ、いつから居たんだ。気付かなかったよ」「入社以来のライバルが、
横に立っているのに気付かないようじゃ、お前も終わりだぞ。ワハハハ」
「ああ、終わりだね」「どこに出向することになったんだ?」「静岡にある小さな自動車部品
工場に決まったよ。年収は今より30%減だが、65歳まで働けるそうだ。そこで15年、総務部長として
頑張ることになった」「業界四位の大手商社の部長まで行ったお前が町工場の総務部長さんか。
いや、お前は確か、フィリピン支店長までやってんだな。失敬した」
「これが証拠の勲章だ」と左手をたくし上げて見せる。「現地人を指揮して沼に落ちて蛇にやられた。
支店長ったって現場監督だった。ワハハ」「俺は名古屋のバルブ専門会社の業務部長だ。年収は20%減だが、
定年は60歳、どうも俺とお前は、最後まで勝ち負けがはっきりしない競争を続けてしまったようだな。ハハハハハ」
「俺の勝ちさ、この勲章の分だけ、俺の勝ちだ」「馬鹿、そんな勲章がなんだ。俺だって、此処に傷ぐらいある。
全部で六針も塗ったんだぞ!」と、ネクタイをほどいて、ワイシャツの襟を広げて見せる。
「あれ、なんだその傷は? お前一度も、外(海外)へ出なかったんじゃないのか?」
「出なかった出なかった分、仕事仕事で、家を空けていた。息子にやられたんだ。[お前なんか、父親じゃない]ってな。
これも勲章だろ」「ああ、間違いなく立派な勲章だ! 認めるよ。しかし、息子に憎まれるだけいいじゃないか」
俺達は三十年近い間、同じ会社でお互いがライバルだった。「俺は、お前と、こんなに気を張らず、話が出来るなんて初めてだ」
「俺もだよ。ワハハハ」「そうか、お前もそうか、ハハハハ」
会社も家族も世間の事も全く忘れて温泉でも浸かりに行こうじゃないかという話がまとまったのは、
それから一か月後だった。


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