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安倍首相米議会演説 全文
安倍総理大臣は日本時間の30日未明、アメリカ議会上下両院の合同会議で、日本の総理大臣として初めて演説しました。演
説の全文です。
議長、副大統領、上院議員、下院議員の皆様、ゲストと、すべての皆様、1957年6月、日本の総理大臣としてこの演台に立っ
た私の祖父、岸信介は、次のように述べて演説を始めました。
「日本が、世界の自由主義国と提携しているのも、民主主義の原則と理想を確信しているからであります」。
以来58年、このたびは上下両院合同会議に日本国総理として初めてお話する機会を与えられましたことを、光栄に存じます。
お招きに、感謝申し上げます。申し上げたいことはたくさんあります。でも、「フィリバスター」をする意図、能力ともに、ありません
。
皆様を前にして胸中を去来しますのは、日本が大使としてお迎えした偉大な議会人のお名前です。
マイク・マンスフィールド、ウォルター・モンデール、トム・フォーリー、そしてハワード・ベイカー。民主主義の輝くチャンピオンを大
使として送ってくださいましたことを、日本国民を代表して、感謝申し上げます。
キャロライン・ケネディ大使も、米国民主主義の伝統を体現する方です。大使の活躍に、感謝申し上げます。
私ども、残念に思いますのは、ダニエル・イノウエ上院議員がこの場においでにならないことです。日系アメリカ人の栄誉とその
達成を、一身に象徴された方でした。
私個人とアメリカとの出会いは、カリフォルニアで過ごした学生時代にさかのぼります。家に住まわせてくれたのは、キャサリン・
デル・フランシア夫人、寡婦でした。亡くした夫のことを、いつもこう言いました、「ゲイリー・クーパーより男前だったのよ」と。
心から信じていたようです。ギャラリーに、私の妻、昭恵がいます。彼女が日頃、私のことをどう言っているのかはあえて聞かな
いことにします。
デル・フランシア夫人のイタリア料理は、世界一。彼女の明るさと親切は、たくさんの人をひきつけました。その人たちがなんと
多様なこと。
「アメリカは、すごい国だ」。驚いたものです。のち、鉄鋼メーカーに就職した私は、ニューヨーク勤務の機会を与えられました。
上下関係にとらわれない実力主義。地位や長幼の差に関わりなく意見を戦わせ、正しい見方なら躊躇なく採用する。―この
文化に毒されたのか、やがて政治家になったら、先輩大物議員たちに、アベは生意気だとずいぶん言われました。
私の名字ですが、「エイブ」ではありません。アメリカの方に時たまそう呼ばれると、悪い気はしません。
民主主義の基礎を、日本人は、近代化を始めてこのかた、ゲティスバーグ演説の有名な一節に求めてきたからです
。農民大工の息子が大統領になれる―、そういう国があることは、19世紀後半の日本を、民主主義に開眼させました。
日本にとって、アメリカとの出会いとは、すなわち民主主義との遭遇でした。出会いは150年以上前にさかのぼり、年季を経て
います。