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「自由は戦って守るもの」 ポポロ事件元被告
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写真・図版 ＮＰＯ活動で草の根運動を続けている千田謙蔵さん＝横手市
３日は憲法記念日。憲法２３条が保障する「学問の自由」を巡り、６２年前に起きた「東大ポポロ事件」の
当事者である元横手市長の千田謙蔵さん（８２）に、事件や憲法への思いを聞いた。
事件が起きた日は、世界的な反植民地闘争デーの前日でした。警視庁本富士署の署員が教室に忍び込んでいて、学生たちに見つかった。
戦前は、特高警察によって普通の自由主義者も大学から追放された。それで「警官だ。けしからん」となり、警察手帳を取り上げて大騒ぎになった。
手帳に書いてある内容が問題だった。教室に立ち入ったり自治会に忍び込んだり、さらに尾行したり教授の身元調査をしたり。
毎日のように大学に来ていて、警察の監視下にあったことがわかったから。当時、私は経済学部の自治会委員長。
それも警察は知っていて「手帳を取ったのは私だ」と決めつけて逮捕した。
でも、起訴された内容がおかしい。警察手帳を取った強盗でもなく公務執行妨害でもなく、暴力行為。
腹を突いてオーバーのボタンをもぎ取ったとか手帳のひもをちぎったとかの微罪です。それで裁判を２０年もやった。
差し戻し審も含めて６回も判決が出た。
最初の東京地裁の判決は「官憲の違法行為を座視し、適切な反抗と抗議の手段を尽くさないことは自ら自由を廃棄することにもなる」と言った
。腹を突いたことより学問の自由を守ったことの方が重要だとほめられたみたい。２回の無罪判決は立派な憲法のおかげです。
最高裁の上告棄却で有罪判決が確定したとき、私は横手市長になっていました。どちらが正しいかは、何万人もの市民が判断したと思います。
憲法の国民主権、平和主義、基本的人権のすばらしさは、何もないときは実感できない。安倍首相は集団的自衛権の行使を、
憲法改正から逃げて閣議決定で認めようとしている。国民投票をしたら反対されるとわかっているからでしょうが、それは憲法の泥棒だ。
私は「憲法九条を守る秋田県市町村長の会」の呼びかけ人代表を務めていますが、自由を守るには戦わないといけません。
１６日には東北の元市町村長で９条を守ろうという連絡会が発足しますが、これも抵抗の一つとして成功させたい。
若い人は戦争を知らないし、元兵隊もしゃべらない。学校でも現代史まで教える時間がない。
「ＪＡＰＡＮＥＳＥ ＯＮＬＹ」なんて言う時代じゃない。歴史をよく学んで、外国とどうつきあうか、学ばないといけない。
逮捕されて留置場に入れられたことは、強烈な社会勉強でした。自転車泥棒何犯という人が「悪いことをした」と言って小さくなって泣くんです。
事前に行政に助けを求めることもせず、罪を犯した自分が悪いという。この人たちの権利が守られるように、
丹念な運動が必要だと卒業したら地元に帰ると決めました。今ＮＰＯで活動しているのも、そのためです。
わたしはもうずいぶん年をとってしまいましたが、二度と戦争を起こしてはいけないと、
草の根の運動の中で訴えていくしかないと思っています。（聞き手・金山純子）
◇
〈東大ポポロ事件〉 １９５２年２月２０日、東京大学公認の学生劇団「ポポロ劇団」が教室で公演中、
客席に警視庁の私服警察官数人がいるのを学生が見つけて詰問、警察手帳を取り上げた。
千田さんら学生２人が暴力行為等処罰法違反で起訴され、裁判では憲法２３条が保障する「学問の自由」に含まれる「大学の自治」を
巡って争われた。
一、二審は「警察官の立ち入りは大学自治を尊重して警察権行使を制限した文部次官通達違反」と無罪を言い渡した。
だが最高裁は６３年、「自治は学問の範囲内で保障され、公演は範囲外」と差し戻した。
差し戻し審は一審で有罪となり、控訴に続く上告も７３年に棄却され、執行猶予付きの有罪が確定した。