23/01/27 12:06:28.38 wtz+vurI0.net
目黒孝二氏の死去は、自分にとって一つの時代が終わったと感じさせる。
何を大げさな、と言われるだろうけど。
確かに目黒孝二氏(書評家・文芸批評家としては「北上次郎」氏)は有名な小説家、
一流の文学者と目されてはいないだろう。
しかし、自分にとっては、戦後の昭和日本、日本が一番元気がよかった70年代と
80年代を象徴する人物と言ってもいい。
書評誌『本の雑誌』を椎名誠氏と共同創刊するのだが、椎名氏は初めから型破りな
ところのある人間。一方、目黒氏は地味な、今ではオタクと呼ばれるような、あるいは、
ニート、引きこもりと言われるような存在に近い。
そういう、本だけ読んで生きていた人間が、やがて本の感想をつづっていた私信を
知人・友人に送っていたうちに評判となり、ついには書評誌『本の雑誌』の創刊に
つながるのである。まるで夢のような話である。
そしてまた、書評家という存在を一つの職業として成立させた最大の功労者かもしれない。
このスレのテーマである翻訳や翻訳家とは直接関係はないけれど、目黒孝二氏の書評
のおかげで、海外の小説の面白さに目を開かれた人は少なくないのではないか。そう
いう意味で海外の翻訳小説の普及に貢献した人物であったのだ。