17/02/08 06:52:39.41 VEB/pxH50.net
>>158 の続き
僕が喉から手が出るほどにほしかった教育は受けられなかった。常に学問に飢えて
いた。少なくともあと20年くらいは学校に通わないといけないくらいに、僕は
学問に飢え渇いていた。精神が枯渇しきっていた。真実と美とをあまりに深く
愛していた。
僕ほど学者に向いている人間はいなかった。僕ほど教育者に向いている人間は
いなかった。それが無残にも、幼少時代に時代の波と親族間の闘争の波に巻き
込まれて、僕は溺死しかかった。
誰も僕を救えなかったので、溺れかかった僕がふと気づくと、岸に乗り上げて息を
吹き返していた。おもむろに起き上がり、疲れ切った手足を引きずりながら僕は
歩き始めた。
僕は一人で学んだ。一人で自分を育てた。学問と芸術へのあまりの深い僕の愛。
それを満たすには、すでにボロボロになった僕の精神をもってしては、80年や
90年の人生ではあまりにも短すぎ、あまりにもその密度が薄すぎた。持って生まれ
た頭も悪すぎた。何よりも、ひどいトラウマのゆえに人間存在の根本的な罪悪に
気づいてしまっていた僕にとって、通常の生活なんてものはとうてい不可能だった。
ともかく、精神障碍者の如く僕は生き続けるよりほかはなかった。生まれてきたが
ゆえの二重の僕の罪悪を、何十年もかけて僕は贖(あがな)った。まるでキリスト
でもあるかのごとく、この矮小にして弱きこと極まりない僕が、全世界の慟哭を
双肩に背負って、少なくとも45年もかけて生き抜いた。その途中で、その自己犠牲の
さなかに、僕は少なくとも2回は、自分が最も信頼すべきはずの2人の人から、
死ぬよりもつらい目に会わされた。
(さらに続く)