15/12/25 05:05:48.53 yOqQX2+A.net
「オーケストラは愛撫してやらねばならないと語ったのはリヒャルト・シュトラウスである。
私達皆の憶えている通り、彼はこの点で名人芸の域に達していた。カール・ベームはしかし
更にその上に抜き出ている。
彼は知識と能力と意志と成果とを一身に体現している。
禅の高僧が矢を射る時、「私が矢を放つ」とは言わない、「矢が放たれる」と言うのだ。
この事は全く自然に生じてしまうのであって、それに何一つ手を加える必要はない。
この見地からすれば、カール・ベームの場合は「音楽が湧く」と言える。
この事を象徴するのがシナ哲学の最も深遠な格言の一つである「無為の中に行為がある」というそれである。
つまり、音楽を自然の様に響かせようとすれば、その前に総てがなされ、験されていなければならないという事である。
カール・ベームの様にこの術を究めた人は、人に与える事によって、お返しに人生の精髄となるものを贈られるのである。」
(ベーム85歳の誕生祝賀会の祝辞から)
ヘルベルト・フォン・カラヤン