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15つづき
なんの工夫もなく,人口具もなく,音楽は無為自然に流れてゆく。むかしワインガルトナーによる「第8」が一世を風靡したが,あの典雅なること珠の如き名演にいちばん近いのがこのベーム盤といえはしないだろうか。
ベームがワインガルトナーに劣るとすれば,それは今ひとつの情熱,もっと良い言葉でいえば<気凛>である。
ベームは世渡りの下手な人である。無形文化財的な世界の至宝であるにも拘わらず,常任指揮者の地位をもたない。
それでなくても彼のような精神主義はもはや欧米では受け入れられなくなっているのだ。
ベームのベートーヴェンがドイツであまり買われていない,などという話を聞くと本当に残念だが,少しでも長生きして,後生の範となるような名演奏の数々をのこしてほしいと思う。(1970)
事実この後ベームはウィーン・フィルと,ベートーヴェンやブラームスの交響曲全集,モーツァルトの管楽器の協奏曲集等々の名演奏を録音に遺した。
また,ベルリン・フィルとはシューベルトの交響曲全集を,ロンドン響とはチャイコフスキーの後期交響曲集を録音に遺した。
どのオーケストラとも常任の契約を交わさずにである。