24/01/28 04:36:09.82 IaEbvKxc.net
凄い作品であることは確かですが、私自身としては一部表現や思想にどうしても賛同しかねるものがあるため好みであるとは言えない作品です。むしろ許せない作品に近いです。
というのも、本作は教科書的なフェミニズムをベースにした女性の解放を描く作品と取ることもできますが、反面、その解放の裏で踏みつけにされている数多の、男女を問わない人間に対する想像力が欠落するよう誘導されているように感じたためです。
特にどうしても許せなかったのは将軍が脳をヤギと交換されて滑稽に描かれている最後のシーンで、映画館で観ていて呆れすぎて乾いた笑いのようなものが出てしまいました。将軍は横暴で、痛い目に遭ってほしいと思ってしまうような最低な人物であることは認めます。ですが、人間であることすら奪い取ってそれを笑い物にしてしまう。それだけは認められません。
私は、例えそれが悪辣な人間であろうとも、人間として生きて死んでいく権利すらも奪い取って良いとは決して思いません。あまつさえ、それを笑い物にするような品性下劣で堕ちた人間にはなりたくないと心から思います。これがお利口な態度であると言われようが構いません。先進的とされるものを肯定するために、他者への想像力に欠けているものをすら認める必要があるのであれば、私は先進的でなくて構いません。
最後に、本作を観て、ベラの成長に勇気づけられてこれからも頑張ろうと思った方、素晴らしいと思います。是非とも1人の人間として立ち上がって邁進していただきたいです。
対して、都落ちしていく男たちを観て嫌な気分になった方、努力などの過程を不可視化されて、ただ結果として得られた権利を剥奪されているとも言えるのですから、それもまた仕方ないという気もします。
賛否の分かれる作品であるように感じますが、ただ唯一、老若男女善人悪人問わず私たちはそもそも人間であって、他者から人間であるということすら奪い取られてしまう、あるいは人間であることを奪い取れるような道理は決してないということだけはどうしても言いたいです。