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ヨーロッパの貴族階級は、平和的通商に対する高慢な軽蔑心を中世から引き継いだ。
この軽蔑心が、それぞれの国の国民性に応じて通商の発展を制限するように働いた。
スペイン人の誇りはこの軽蔑心と容易に一致し、働こうとせず、ただ富がやってくるのを
待つという、あの災厄的な精神と一緒になって、彼等を通商から顔を背けさせた。
フランスに於いては、フランス人自身すら国民性だと自認している虚栄心のために、
スペイン人と同じ方向をたどった。
貴族の数の多い事と華やかさ、また彼等の持っていた考え方によって、彼等が軽蔑する
職業には「劣等」という刻印が押された。金持ちの商人や製造業者は貴族の栄誉に憧れ、
その栄誉を得るや儲けの多い自分達の職業を捨てた。通商は屈辱感の下に続けられ、
そのために最良の代表者達は出来るだけ早くそれから身を引いたのであった。
ルイ十四世はコルベールの影響を受けて、「全ての貴族は、もし小売を行わないならば、
貴族の品位を傷付けたと見做される事無く、商船、貨物及び商品から利益を得ることが
認められる」 という布告を発した。そしてこの措置を採った理由として、「海上貿易は
貴族の身分と両立しないという広く行き渡っている通念の名残りを払拭するために、
それは臣民の幸福と我々自身の幸福を輸入するものである」 ということが挙げられた。
しかし、意識的かつ公然たる優越感を伴う先入観は、布告によって簡単に拭い去られる
ものではない。特に虚栄心が国民性の顕著な特徴である時はそうである。そしてずっと
後になってモンテスキューは、「いやしくも貴族が通商に従事する事は、君主制の精神
に反する事だ。」 と教えた。