12/04/29 12:09:31.60
二番車ホゾおよび受けの磨耗:
二番車は香箱から大きな力を受けるため、潤滑が不足すると磨耗し易い部分です。ホゾ、受けともに
磨耗が進むとガタを生じ、さらに進行すると歯車が斜めに傾いてしまい、最終的には時計が動かなく
なります。
香箱からの力によって、二番車のホゾと軸受けは赤い部分が磨耗しやすい。磨耗が進むと穴の拡がり
と軸の細りからガタが生じ、最終的には歯車が傾いて動かなくなったり破損したりする。今回はそれ
が進み、軸と軸受けの両方が磨耗していました。組み立てられた状態でも、ピンセットで軸を掴んで
揺らすだけではっきりと歯車がガタつくほどです。
この部分の処置は、ホゾの再研磨仕上げと受側の穴を詰める事で行います。まず、ホゾを研磨して軸
の形を整えます。ただ、研磨によってホゾが細くなるため、磨耗が限度を超えてしまっている場合に
はこの方法は使えません。その場合は、磨耗したホゾを取り除いて新たなホゾを継ぎ足す「入れホゾ」
を行う必要があります。今回の磨耗は重度ではありましたが、余裕のある懐中時計であったことが幸
いし、何とか研磨によって処置することができました。ホゾの修正は、磨耗に合わせてホゾ全体を研
磨し、真っ直ぐな軸に整形し直すことで行います。
(続く)