11/01/10 12:31:30
吉見俊哉『カルチュラル・スタディーズ』講談社
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数年前まで、「マス・コミュニケーション学会」というのに所属していたことがある。たまに学会に出ると
、「カルチュラル・スタディーズ」と銘打った発表がやたらに多いので、何かと思ってのぞいてみると、
内容は映画や漫画に小むずかしい理屈をつけただけだった。これは発表者の頭が悪いだけなの
かと思って解説書を読んでみたが、何のことはない、全部その手の「文化的雑談」なのだ。
この中心となっているのが、著者も所属する東大の社会情報研究所である。もとは占領軍に
よって新聞研究所として作られたが、斜陽産業の新聞ばかり評論していても先が見えているので、
「社会情報」という意味不明の名前がついた。もとは文学部の3類(社会学・心理学)と一緒に
なって「社会情報学部」を作ろうと画策したが、文学部に断られたそうだ。それはそうだろう。
社会学や心理学には一応、系統的な理論があるが、この種の「マスコミ論」は、だれでも見て
いるテレビや新聞を評論するだけで、理論も体系もないからだ。
こういう「研究」には需要はないが、供給は多い。どこの大学でもリストラの対象になっている
語学教師や、学問として先のない社会学など、文学部の落ちこぼれの失業対策である。