11/01/28 18:07:32 uRAm+3gn
ニカは言った
「時々はお寿司食べたいな」
151:名無しさん@お腹いっぱい。
11/01/31 18:56:56 7FEmaz2Y
じゃ、静岡まで行って魚がし鮨で豪快こぼし太郎を食べよう。
152:名無しさん@お腹いっぱい。
11/06/06 18:17:22.30 Aj8FBECj
かばやき太郎さんでいいよ☆彡
153:名無しさん@お腹いっぱい。
11/07/17 09:57:51.89 TRF1qxRa
>>151
タカトシの番組でやってたあああ
154:名無しさん@お腹いっぱい。
11/08/26 11:44:27.91 Vp15mM0k
te
155:名無しさん@お腹いっぱい。
11/11/04 22:59:50.51 P45d21Fh
俺こういうスレ好きよ
156:名無しさん@お腹いっぱい。
11/11/25 14:06:10.46 Pmmqyutg
age
157:誘導
12/04/29 08:06:35.06 HNf8OoDC
エレクトロニカ総合 pt.2
スレリンク(nika板)
158:名無しさん@お腹いっぱい。
12/06/10 02:08:41.34 kHL+SkWE
会社の帰り道。僕はスーパーへ寄って夕飯の食材を買った。
食べたいものが思い浮かばなかったので、事務的に白菜や豆腐、豚肉を買った。
困った時の鍋料理だ。鍋に食材を入れて昆布出汁で15分煮込めば、
熱々の料理が出来た。食べたい物が何も見当たらない時、
温かい料理は僕の心を内側から優しく満たした。
その温かさに身を預けていると、いくらか孤独が和らいだような気がした。
159:名無しさん@お腹いっぱい。
12/06/10 02:09:12.92 kHL+SkWE
左手に皮の通勤鞄。右手に買い物袋をぶら下げて、
僕は住宅街の中を自宅へ向かってテクテク歩いた。20分程度の道のりだ。
100回連続コピー&ペーストしたような、同じ形の家が延々と通りに並んでいた。
永遠性を思わせる無個性な家々は、
しかしその一軒一軒に各々の生活を営んでいた。
窓から光が漏れ、カーテン越しに家族の影が揺れていた。
昼間の風景が取り残されたように、
芝庭の上にスコップやサッカーボールが転がっていた。
160:名無しさん@お腹いっぱい。
12/06/10 02:09:39.25 kHL+SkWE
目に映る何でも無い出来事や風景が、奥行きを持って、僕に語りかけた。
白菜だってシイタケだって、一軒家だって、
それはただの食べ物であり建物だ。それ以上でもそれ以下でも無い。
それは僕の心を慰めたり、背中を押したりはしない。ただそこに存在があるだけだ。
それらから何を感じ取るかは、僕の気の持ちように委ねられていた。
何かに執着している時。それは大抵、自分を見失っている時だった。
161:名無しさん@お腹いっぱい。
12/06/10 02:10:08.44 kHL+SkWE
素足にサンダルを履いて、ニカは自宅の玄関先で夜空を見上げていた。
空には薄雲がかかり、月も星も見えなかった。
時々、湿気を帯びた夜風が、後ろからニカを抱きあげるように巻きついて、
Aphex TwinのTシャツを揺らめかせた。夜の闇は、
紺のホットパンツからのびるニカの白い足を、
爪先から太ももまでくっきり浮かび上がらせた。
162:名無しさん@お腹いっぱい。
12/06/10 02:10:38.83 kHL+SkWE
「ただいま」
僕は郵便ポストを開けて中を確認した。中は空っぽだった。
「今日の夕飯はいつもの鍋だ。食欲が無いんだ」
ニカは何も答えなかった。怒りもしなかった。
「みんな去ったの?」
夜空を見上げたまま、ニカは小さな声で呟いた。
右手のビニール袋が重かった。
「いや。誰も、何も去ってないよ。ニカ。
今日は気分がのらなかったから、会社が終わったらサッサと帰宅した。
途中のスーパーで夕飯の食材を買った。
会社の専務もスーパーのおばさんも、みんないつも通りだった。
誰も何も去っていないし、変わっていない」
「私も連れて行って欲しかった」
髪が風に揺れて、貝のような美しい湾曲を描く左耳が露わになった。
天に教えを乞うように、ニカは空へ向かって静かに続けた。
「やがて梅雨の季節が、私を雨の音で覆うの。
そしてみんなは立ち去って、ここはどこへでも繋がって、
どこへも行けない場所になるの」
一筋の光がニカの頬に流れた。
ニカは両手で顔を覆い、シクシクと泣き始めた。
163:名無しさん@お腹いっぱい。
12/06/10 02:11:04.45 kHL+SkWE
よくある、気分の乱れだ。梅雨入り前の、
ちょっとした気分の混乱だ。何も問題は無い。
僕は家に入り、玄関先へ買い物袋と通勤鞄を置いた。
また表へ戻ると、後ろから静かにニカの肩を抱き寄せた。
僕の身体で全身が包み隠れてしまうほど、ニカの身体は柔らかく細かった。
「誰もニカを置いて、立ち去ったりはしないよ」
ニカが落ち着くように、僕は静かに耳元で囁いた。
「僕は毎朝同じ会社へ通勤して、夜にニカのいる場所へ戻る。この自宅だね。
正確には自宅じゃなくて、借家の平屋だ。けれども来年3月の更新までは、
僕たちが住める家だ。安心していい。
週に6日働いたら、最後の1日はニカのために取っておく。
朝起きてから夜眠るまで。ニカのために予定を空けるよ。
雨が降ったら、アジサイに雨粒を落ちるのを、庭先から眺めればいい。
外へ出かけたければ、外へ出ればいい。今年の夏は海へ行きたいね。
誰もニカを置いて、去ったりはしないよ」
順を追って、僕は2人の生活の周辺を説明した。
164:名無しさん@お腹いっぱい。
12/06/10 02:12:03.91 kHL+SkWE
ニカは寄りかかるように、全身を僕に預けていた。
泣いて乱れていた呼吸も穏やかに収まり、落ち着きを取り戻してきた。
季節の変わり目は、心の現在地を白紙へ戻す。
環境の変化を敏感に察するニカにとって、
季節の変わり目は、砂漠へ一人置き去りにされる
不安のようなものらしかった。
「本当にどこにも行かない?」ゆっくり身体をくねらせて、
ニカは身体の正面を僕に向けた。
僕の身体の正面に、ニカの胸が柔らかく押し付けられる。
「どこにも行かない」
「悲しい雨粒が落ちる時も、世界が奥行きを失って病める時も、
私が自分を見失って、何かを探している時も、どこへも行かない?」
「誰もニカの傍を離れないよ。少なくとも僕は離れない」
「私がニカでも?」
「離れない」
ニカは白い足を僕の足に絡みつけて、
Yシャツに埋めた顔を、猫のように何度も擦りつけた。
日向の香りがした。
それは僕の心を慰めたり、背中を押したりはしない。
ただそこに存在があるだけだ。僕たちはそれを感じるだけだ。
それを人は音楽と呼び、エレクトロニカと呼んだ。