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社説
地方創生―目線は低く、息長く
2014年9月15日(月)付
安倍首相が改造内閣の目玉政策に掲げる「地方創生」。これを進める政府の「まち・ひと・しごと
創生本部」が先週、すべての閣僚が参加して初めての会合を開いた。
人口減少に対応するため、2020年までの「総合戦略」や「50年後も人口1億人維持」の
長期ビジョンを年内にまとめる。次の臨時国会には、地方創生の基本理念を定める法案も出すという。
手をこまねいていれば約半数の市区町村が消滅する可能性がある―。民間の研究組織「日本
創成会議」は5月にこんなショッキングな試算を公表した。政権には「アベノミクスの恩恵が
地方には届いていない」という問題意識もある。
少子化や都市への人口流出に対する自治体の危機感は極めて強い。安倍政権が地域の活性化に
本腰を入れることについては賛成だ。
ただし、かつて政府主導で進めた合併推進などの政策が、行政サービスの低下や自治体の
借金増を招いた面もあることを忘れてはならない。
首相は各閣僚に「従来とは異次元の施策を」とハッパをかけたが、新しい政策を進めるに
あたっては政府が上から目線でレールを敷くのではなく、自治体側とともに知恵を出し合う共同作業が欠かせない。
自民党には、来春の統一地方選で「地方重視」をアピールしたいとの思惑もうかがわれる。
目先のことにとらわれず、息の長い取り組みが必要だ。
政権の動きに合わせるように、全国町村会が先週、「都市・農村共生社会の創造」と題した
提言を発表した。
農村を、再生可能エネルギーの供給源として、あるいは企業のサテライトオフィスでの仕事と
農業を両立させるような新たなライフスタイルの場としてとらえ直す。そのうえで農業・農村
政策で政府と自治体が担うべき役割を整理し直したり、新たな交付金制度を設けたりすることを
求めている。
町村会が具体的な政策を盛り込んだ提言をするのは初めてだ。「人口減の局面で、農村の
果たす役割やあるべき姿について、農村から問いかける必要を感じた」と会長の藤原忠彦・長野県
川上村長は説明する。
過疎の問題はいまに始まったことではない。簡単に見つかる解はない。だからこそ、霞が関の
発想だけでなく、自治体側からの発信が重要になる。
知恵を出せなければ消滅は免れない。自治体側にもこのぐらいの気概がほしい。
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