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1977年に私は韓国の大統領府（青瓦台）や企業などを取材し、月刊誌「文藝春秋」に「韓国―黒い癒着からの離陸（テイクオフ）」
というルポルタージュを発表した。今、そのときのことを思い出している。
・「韓国地獄論」を否定し、糾弾される
当時日本の新聞やテレビは、「北朝鮮こそ地上の楽園」「世界で最も理想的な国は北朝鮮である」と褒めそやしていた。それに対し、
「韓国は地上の地獄だ」というのである。そういう認識がメディアの間で常識となっていた。
当時、韓国の大統領は朴正煕（パク・チョンヒ）氏だった。現大統領、朴槿恵（パク・クネ）氏の父である。韓国が「地上の地獄」と言われた
理由の一つは、朴正煕氏による独裁政治が続いていたからである。
しかし私はルポの中で、「朴正煕大統領の独裁下で政治はお世辞にも民主化しているとは言えないが、経済は着実に強くなっている。
いまに日本にとって経済的に脅威の国になるだろう」と書いた。つまり、「韓国地獄論」を否定したのである。
すると、編集部と私の自宅へ記事に対する批判が殺到した。あちこちで糾弾集会が開かれ、「田原はKCIA（韓国中央情報部）に騙された」
などと流言飛語が飛び交った。私は糾弾されることはイヤではないので、集会に出て行き論争した。
・昔は左派、今は右派からの批判。共通するものは何か
当時の日本のメディアは、今から見れば左翼に近かった。韓国は酷い国だと言っている人たちの多くがマルクス信奉者であり、社会主義信仰に
近いものがあった。
しかし1年も経たないうちに、私の書いたこのルポは受け入れられ、その内容は常識となっていった。
当時は左派が韓国を非難し、北朝鮮を「すばらしい」と称えた。今、北朝鮮をすばらしいと言う人はいないが、韓国を非難しているのは
右派の人たちである。彼らは「愚韓論」「亡韓論」「悪韓論」などと言い、激しい言葉で韓国を批判、非難する。
私は、かつて左派が韓国を糾弾し、今は右派が韓国を批判している現象について、一見逆転したように感じられるが、実は共通点が
あるように思う。国際情勢、日本と韓国の外交関係、そして韓国のあり方について、どちらもきちんと見ていないのである。
日本を取り巻く東アジア情勢が今、大きく変わりつつある。その変化の兆しを右派の人たちは冷静に見つめ、受け入れようとしていないのではないか。
・中国要人との会談は中国側の要請。なぜか？
まず、中国が大きく変わろうとしている。
今年5月、超党派の日中友好議員連盟（会長・高村正彦氏）のメンバーが訪中し、その直後にアジア・アフリカ問題研究会（AA研）のメンバーも
訪中した。ほかにも自民党幹部が中国共産党の要人たちと会談している。彼らは「これは日本からのオファーではない、中国からの要請だ」と言う。
中国はここにきて日本との友好的関係をつくりたいと思い始めている。しかし、日本のメディア、特に保守系は中国が日本に対して柔軟な態度を
示すはずがないと思い込んでいるのだろうか。こうしたサインを汲み取らず、韓国だけでなく中国も叩いている。
なぜ中国に変化の兆しが見られるのか。次のような理由がある。
7月末、中国共産党最高指導部メンバーだった周永康（チョウ・ヨンカン）・前党中央政法委員会書記が失脚した。彼のバックには江沢民元国家主席が
いたとされ、当初、習国家主席は周氏を失脚させることはできないと見られていた。
しかし、周氏は失脚した。これは中国の内政が固まったことを示している。習国家主席は政敵を追放することで実権を完全に把握したと見られるのだ。
（>>2以降に続く）
Yahoo!ニュース nikkei BPnet 10月1日(水)21時41分
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