14/09/24 16:20:08.32
◆表現の自由の危機
自民党の改憲草案の中で特に全体主義の姿勢が示されているのが「表現の自由」を保障した憲法21条の改正案だと指摘する。
現行の「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」に、改憲草案では「前項の規定にかかわらず、
公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」という条文が追加された。
「もし自民の案が通れば『公益及び、公の秩序を害する』表現活動はできなくなる。時の政府が公益を害すると判断すれば、
僕がいましゃべっていることを言うこともできなくなるし、神奈川新聞が政権に批判的なことを書くことも不可能になる」
8月には自民党の高市早苗政調会長(現総務相)がヘイトスピーチ(差別扇動憎悪表現)の規制策を検討するプロジェクトチームの会合で、
国会周辺のデモも同列に規制の対象とする案を提示し、市民団体などの猛反発を受けて撤回するという騒ぎがあった。
「政権に都合の悪い国会デモをうるさいから規制対象にしようなんて、まさに全体主義の発想。でもやはりそれが本音なのだろう。
本当に油断ならない」
高市氏はその後、極右団体の男性代表と一緒に写真に写っていたことも明らかになった。麻生太郎副総理は7月の講演会で改憲に触れ、
「ドイツのワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。あの手口を学んだらどうか」とナチス政権を引き合いに持論を展開。
国内外の批判にさらされ、発言を撤回した。
「欧米諸国には、日本がかつて天皇制ファシズムの下に侵略をした歴史を持つ国という認識が常にある」
発足当初は経済政策優先とみられていた第2次安倍政権に対する見方は確実に変わってきているという。
「安倍さんが『侵略の定義は定まっていない』と発言したり、英語で『War Shrine(戦争神社)』とも表記される靖国神社に安倍さんや閣僚が
参拝したり、ナチスに関して肯定的な発言や行動をしたりする。それはドイツのメルケル首相がナチスの墓を参拝し、ホロコーストはなかったと
発言するのと大差ない」
□海外から見た日本
ニューヨークに居を移して21年。外から日本に触れてきたからこそ見えるものがある。
「日本国内の議論はガラパゴス化している。従軍慰安婦の問題もそう。誤報をした朝日新聞はもちろん反省が必要だが、
周囲の朝日たたきは常軌を逸している」
内向きの論理にとらわれ、見落とされる本質。
「強制連行の有無を争点にしているのは日本国内だけだ。日本が女性を『Sex Slave(性的奴隷)』として扱ったことが覆るわけではない。
安倍首相まで慰安婦問題を朝日新聞のせいにして、慰安婦そのものをなかったことにしようとしているが、『日本の名誉を傷つける』のは
朝日新聞よりもむしろ、歴史から目を背けようとする態度だ」
議論や合議によらず、知らぬうちに他者を排斥して進む熱狂なきファシズム。低温やけどは通常のやけどより重症化しやすく、そして、治りにくい。
そうだ・かずひろ 1970年栃木県生まれ。ドキュメンタリー映画の代表作に「選挙」「精神」など。著書に「日本人は民主主義を捨てたがっているのか?」
(岩波ブックレット)、「熱狂なきファシズム ニッポンの無関心を観察する」(河出書房新社)など。