14/08/28 16:51:51.78
ソース(JBPress、北村淳氏) URLリンク(jbpress.ismedia.jp)
8月23日と24日に陸上自衛隊の「富士総合火力演習」が実施された。今年のテーマは昨年に引き続き「島嶼防衛」であった。
日本の防衛当局は、島嶼防衛とは「中国人民解放軍侵攻部隊から南西諸島を防衛する」ことが主たる想定事例であるとはもちろん
公言していない。だが、日本でも中国でもアメリカでもこれは公然の常識と言えよう。
■中国は尖閣諸島には侵攻しない
東シナ海や南シナ海での中国による極めて好戦的な軍事行動を踏まえて「島嶼防衛」に真正面から取り組む方向性は極めて適切
である。ただし問題なのは、日本の多くのメディアが、島嶼防衛というと短絡的に尖閣諸島が中国によって占領されるケースを想定
していることである。
確かに、中国軍当局が公に配布したコンピューターゲーム「光栄使命」(オンライン版も登場)には尖閣諸島魚釣島で自衛隊と
人民解放軍が戦闘するものもある。だが、これはあくまで尖閣諸島の領有紛争を一般の人々に周知させるためのプロパガンダの
一環であり、ゲーム自体も“お遊び”にすぎない。
写真=中国人民解放軍が作成したPCゲーム「光栄使命」(Wikimedia)
URLリンク(jbpress.ismedia.jp)
尖閣諸島には軍事施設や警察施設をはじめ公的機関も民間施設もまったく存在しておらず、周辺海域に海上保安庁巡視船が常時
警戒監視にあたっているほか、海上自衛隊軍艦もパトロールしているといった状況である。このような無人島を中国人民解放軍が占領
するのは一見容易に思えるが、実は極めて困難である。
いくら無人島で守備隊も存在しないとはいえ、島嶼を占領するからには、周辺海域と空域での軍事的優勢を手にするとともに、
尖閣諸島と中国浙江省沿岸域との間の補給帯を確保しなければならない。したがって、極めて大規模な戦力を投入しなければ、
占領、そして占領維持はできないことになり、何の軍事施設も生活インフラも存在しない魚釣島を占領する軍事的価値はほとんど
見いだせない。
もし、人民解放軍がそのような日本の島嶼に対する侵攻作戦を実施するならば、尖閣諸島ではなく宮古島や石垣島ではないか、
というのが、水陸両用戦に精通する米軍関係者たちの一致した意見である。
■島嶼「占領」より「奪還」の方がはるかに困難
中国が宮古島を占領するにせよ石垣島を占領するにせよ、日本で「島嶼防衛」が話題となると、決まってと言ってよいほど「離島奪還」
が取りざたされるが、アメリカ軍関係の水陸両用戦専門家たちはそのことに疑問を呈している。まして、日本のメディアが、自衛隊の
島嶼防衛方針は“取らせてから取り返す”などと伝えているのは、驚愕そのものというところである。
水陸両用作戦は、陸上戦力、海上戦力、航空戦力の完全な統合が必要であり、計画、動員、移動、戦闘、補給とすべての段階を
通して最も複雑な軍事作戦と言われている。その中でも、島嶼占領は難易度がずば抜けて高く、それにも増して困難なのが、
敵が占領して奪還を阻止しようと待ち構えている島嶼に侵攻して取り戻す「離島奪還作戦」である。
とりわけ、接近阻止領域拒否(A2/AD)戦略を実施するために、強力な各種対艦・対空ミサイル戦力を構築している中国人民解放軍
を相手とした水陸両用戦は、想像以上の困難に直面するものと、アメリカ海兵隊や海軍の戦略家たちは考えている。
そして、中国のA2/AD戦略に対抗するためにアメリカ軍が構築している空海統合戦闘構想では、とても人民解放軍相手の島嶼攻防戦
でアメリカ軍が勝ち残るのは不可能に近く、「ともかく絶対に中国に島嶼を占領されないための逆A2/AD戦略が必要となる」といった論議
が展開されている。
つまり、「島嶼防衛の鉄則は、敵に島嶼を占領させないことである。そして理想的には、敵侵攻部隊を一歩たりとも上陸させないこと
である。」という島嶼防衛の基本に立ち返るべきであるというのが、米軍関係者の間での中国人民解放軍を相手とした島嶼防衛議論の
潮流なのである。
(>>2以降に続く)