14/07/23 09:35:27.00
売れる本ばかり追う不況の出版界
「嫌中嫌韓」あるいは「嫌中憎韓」といったフレーズが、出版界でもしばしば耳にされるようになってきている。
いわゆる「嫌中嫌韓本」は、日本の隣国である韓国や中国を非難する内容の書籍のことで、こうした書籍が同時に多くベストセラーに入るように
なったことで注目されるようになった。この種の出版物では、両国を揶揄するような見出しも特徴的である。
私の手元にも『呆韓論』『韓国人による恥韓論』といった本が何冊かある。「嫌中嫌韓」ブームは、この1年間で顕著になったとされる現象で、
その嚆矢は2005年夏に発刊されシリーズで累計100万部を売った『マンガ嫌韓流』とされている。
隣国を嘲笑し、憎悪することを助長するかのような言論傾向は書籍に限らず、今や夕刊紙から週刊誌まで、幅広い媒体で同様に見ることができる。
例えばある夕刊紙で今年3月までの半年間にメインの見出しに「嫌韓」または「嫌中」が登場した割合は、集計すると80%にものぼるという。
突きつめると、売れるから出す、出すから売れるといった1つの循環に、出版界全体が浸かっていることは明らかだ。
あるときは歴史的事実を歪曲してまで韓国や中国を罵り、差別や対立、憎悪感情を煽るかのような出版物であっても、それが実際に売れるとなると、
不況の出版界にあっては大きな光明に映るのだろう。
「嫌中嫌韓」ブームの根底にあるのは、
「だれかを攻撃したい。共助の道を模索するより楽だから」「なんとなくスッキリするから」(毎日新聞 2014年7月14日付)
といった安易さに加え、
「(嫌中嫌韓本は)わかりやすいストーリーを組み立て、刺激的に書かれている。そのわかりやすさに読者は安心する」(同)
などといった解説もなされている。
共通するのは、過去の戦争における日本軍の戦争責任をねじまげ、責任を回避することを試みようとする傾向だ。
例えば日本軍による南京虐殺が全く存在しなかったかのような主張や、従軍慰安婦問題の責任を故意に矮小化しようとする試みなど、日本の戦争責任
を否定しようとする側面が強い。
これらは一般には「歴史修正主義」といわれるもので、事実関係を意図的にすり替えた主張などが、戦争被害の当事者である韓国・中国の両国民を刺激
していることは明白だ。
こうした風潮が強まったのは、安倍晋三首相が「嫌中嫌韓」ブームと類似する歴史観をもち、安倍内閣の性質と親和性が高いことがあげられる。
もともと中韓との近年の外交悪化は、韓国大統領の突然の竹島訪問や、中国船の尖閣諸島周辺における度重なる領海侵犯などが原因となっているものだ。
一方で安倍首相も、過去の戦争と密接な関係をもつ靖国神社を訪問するなど、中韓を刺激する行動をとったことも大きく影響している。