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朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は英国の故サッチャー元首相、ドイツのメルケル首相とよく比較される。
3人はいずれも自国で初の女性の政治的トップだからだ。
11年半にわたり首相を務めたサッチャー氏は、首相就任から3年目となる1982年4月、アルゼンチンとの間で
フォークランド紛争が発生すると、空母2隻と駆逐艦7隻を南米の現地に派遣した。英国軍から最初の戦死者が出た際、
サッチャー氏は閣議を招集し、1分間テーブルだけを見詰めながら涙を流したというエピソードも伝えられている。
サッチャー氏の「鉄の女」という異名は決して大げさなものではなかった。フォークランド紛争の際にサッチャー氏は
家族に事細かに自筆の手紙を送り、戦争に対する自らの決意を常に確認していた。サッチャー氏は英国人がわずか
1200人しか住まない島に、2万8000人の兵力を派遣してアルゼンチンを退けた。戦闘で島の住民とほぼ同じ数の
戦死者が出たことで、一部では「愚かな戦争」と皮肉る声もあったが、リーダーシップというものはそのような単なる
数字だけでは計算できないものだ。
紛争後、サッチャー氏は国民から大きな支持を得た。その国民の後押しという強力なパワーを前面に出し、当時ストに
明け暮れていた過激な労働組合を押し切って公共機関の民営化を断行することで、ストや非効率などに象徴される
「英国病」をも治癒した。サッチャー氏は単に経済を再生させただけにとどまらず、国民の意識の中から
「社会民主主義の幻想」を消し去り、その非効率を社会から追い出した。そのため「サッチャー氏は経済だけでなく、
国民の意識をも改革した」と今なお評価されている。
サッチャー氏は1世代前の偉大な女性指導者だが、現在の女性指導者として誰もが思い浮かべるのはドイツの
メルケル首相だ。昨年3期連続の続投が決まったメルケル氏だが、今後も2017年まで予定されている今の任期を
全うすれば、首相としての在任期間は12年となる。メルケル氏も「ドイツのサッチャー」と呼ばれることはあるが、
そのスタイルはサッチャー氏よりもはるかに柔軟で包容力もある。サッチャー氏は「われわれは『一つの国民』になる方法を
あらためて学ばなければならない。今それができなければ、いつか国民にもなれなくなる」と英国国民に訴え続けた。
メルケル氏は政策を遂行する際には時間をかけて国民を説得し、同意を引き出すタイプだ。またメルケル氏は原発や
福祉といった分野では野党の主張も積極的に取り入れた。サッチャー氏は「尊敬される指導者」だったが
「愛された」とまではいえなかった。しかしメルケル氏はサッチャー氏ほど情熱的には見えないが、尊敬と愛情を
同時に受ける指導者と評価されている。
朴大統領は就任当初、メルケル氏のリーダーシップを参考にしたとされているが、それがいつしかサッチャー氏のような
スタイルに変わってしまったようだ。しかし韓国国内の政治状況を見ると、サッチャー氏の「パワフルなリーダーシップ」よりも、
メルケル氏の「統合的なリーダーシップ」の方がより切実に求められているはずだ。イデオロギー、地域、世代などに分かれて
「死ぬか生きるか」という対立を繰り広げる韓国国内の現実では、サッチャー氏のような「一方通行式」のリーダーシップだと
国民の共感は得られないだろう。
以前は「冷たい」「強情」などと評されることもあったメルケル氏も、首相に就任するとそのスタイルを見直し腰を低くした。
「厳格さ」や「徹底した姿勢」は周囲の人間に任せ、自らは「感性」によって国民に接した。ドイツ国民はメルケル氏のことを
「頭が切れる」とは考えていなかったし、また「偉大な首相になる」とは期待もしていなかった。しかしメルケル氏は数多くの
小さな計画をしっかりと実行に移し、厚い信頼を得るようになった。同じように朴大統領も腰を低くして政権を運営してほしいものだ。
ただしあしき慣習の改善や規制改革といった大原則については力強く推進してほしい。サッチャー氏とメルケル氏は
「自由には責任が伴い、努力には見返りがある」という公正の原則をいかなる場合にも適用した。指導者が周囲や国民との
コミュニケーションを口実に原則を曲げれば、尊敬も愛情も受けられなくなるものだ。われわれは過去の政権ですでにそれを目の当たりにしている。
呂始東(ヨ・シドン)プレミアムニュース部コンテンツチーム長
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2014/05/26 10:36
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