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【湯浅博の世界読解】多くの隣国にケンカ売る中国 稚拙で悪い戦略の追求ばかり
インド総選挙の行方を息を殺してみていたのは中国であろう。民族色の強い人民党の圧勝で、中国外務省はただちに
「中印両国は競争相手ではなく、協力パートナーである」と秋波を送った。穏健な国民会議派のシン首相が強調してきた
決めぜりふをなぞったのだ。
習近平政権はインドの中国離れへの警戒感が強い。自らの高圧的な外交姿勢から、尖閣諸島をめぐる日本との対立のほかに、
ベトナム、フィリピンなどの近隣諸国とも反目している。米戦略国際問題研究所の上級研究員、エド・ルトワック氏によれば「多くの
隣国にケンカを売る悪い戦略を追求するばかり」である。
インドで反中気分を代表する人民党のモディ政権ができると、東シナ海や南シナ海での係争がシーレーンに沿ってインド洋にまで
広がる可能性が大きい。中国の「悪い戦略」をめぐる周辺諸国との同時多発型対立の表面化である。
振り返れば、中国は日本の尖閣国有化を奇貨として強硬になり、「侵略国日本が盗んだ」として包囲網の構築をもくろんだ。
2012年の国連演説に始まり、ASEAN(東南アジア諸国連合)会議でも欧州歴訪でも、中国要人いくところ「日本の軍国主義復活」の
大宣伝である。
非力な他の周辺国に対しては、力任せに自国のルールを押し付けた。南シナ海のスカボロー礁からフィリピン漁民を追い出し、
ベトナム船の探査ケーブルを切断した。南シナ海に「九段線」という領海版図を引いて島嶼(とうしょ)を分捕る手法は、「19世紀の
帝国主義と同じ」と批判を浴びた。
歴史上、オスマン帝国、フランス帝国、ドイツ帝国など大陸国家が海に向かうときは、力を振りかざし、周辺国の反発を招いたものだ。
だが、中国はその結末として、あまたの帝国が崩壊していった歴史を鑑(かがみ)とすべきであろう。小国といえども、常に力に
屈しているわけではない。
安倍首相は「国際法を守れ」との外交戦で応じた。先に訪問したNATO(北大西洋条約機構)本部でも、中国を「国際社会の懸念」と述べ、
尖閣周辺の領海侵犯を「力による現状変更の試み」と批判した。中国は「悪意を持って中国脅威論を言いふらした」と反論したが、直後に
南シナ海で見せた強行策が安倍発言の正しさを裏付けた。
中国がベトナムと争うパラセル諸島で、石油掘削装置(リグ)の設置を強行した一件だ。リグの支援に80隻という異常な数の艦船を動員した。
中国の行動は紛争当事国の「合意の成立を危うくし、阻害すべきではない」とする国連海洋法条約に反し、紛争地の掘削自粛を求める
ASEANとの行動宣言にも反する。
それ以前にも、フィリピン海兵隊が拠点とするセカンド・トーマス礁への補給船が中国船に阻止された。中国はこの補給活動が2002年の
行動宣言に違反していると非難したが、フィリピンが同礁を領有したのは宣言の3年前である。これらの動きを見てインドネシアは、
ナトゥナ諸島周辺の軍備を増強することを表明している。
元来、争いごとを嫌うASEANも、ついに「深刻な懸念」を表す異例の外相声明を出した。当のベトナムは困惑のふりをしながら中国を
侵略者とする外交キャンペーンを始めた。中国の「力による現状変更」は、アジア各国を対中国包囲の結束に駆り立て米国を引き込んで
対中バランスを図ろうとする。(東京特派員)
zakzak 2014.05.21
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