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ベトナム反中デモで危機に陥った米アジア戦略、分析/AFP/Shaun TANDON 2014年05月16日 20:58 発信地:ワシントンD.C./米国
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【5月16日 AFP】南シナ海で中国が進める石油掘削をめぐってベトナムで反中国
抗議デモが激化し死者を出す事態となったことで、対中国をにらんで東南アジア
諸国との関係を重視してきた米国のアジア戦略がリスクに直面している。
ベトナムでは、中国が南シナ海に石油掘削装置を設置したことに抗議するデモが
全国の3分の1の省に拡大し、ベトナム人労働者が中国人労働者や中国系の工場を
襲撃して死者が出ている。
バラク・オバマ米大統領は、東南アジアとの関係構築に力を入れてきた。東南ア
ジア経済の活力に期待するとともに、中国の台頭に対抗したい各国が対米関係強
化に意欲的との判断からだ。かつての敵国ベトナムと新しい軍事協定を結んだの
は、この方針を示す典型例だ。
それが今「米国に大きなジレンマをもたらしている」と、米独立系シンクタンク
「新米国安全保障センター(Center for a New American Security、CNAS)」の
アジア地域専門家、パトリック・クローニン(Patrick Cronin)氏は指摘する。
「米国がベトナムと政府間の戦略的対話を行うだけでは不十分だ。両国間に協定
に基づくルールがあり、ベトナムが犠牲になることはないということを、ベトナ
ム国民に保証する必要がある」
■ベトナム暴動はアジア経済にもリスク
米保守系シンクタンク「ヘリテージ財団(Heritage Foundation)」のディーン・
チェン(Dean Cheng)上級研究フェローは、中国が暴動につけ込んで自らが被害
者だと主張する危険性を警告する。既に中国政府は、ベトナム政府が暴徒を「黙
認」したと非難している。
「こうした事態は間違いなく、米国の思惑をややこしくする。米国は無垢で善良
な市民を支援したいのに、外国の直接投資(工場)を攻撃する行為がそれに泥を
塗っている」
チェン氏は、暴徒が台湾企業まで攻撃したことで投資先としてのベトナムの魅力
が大幅に低下する可能性に言及。外国の投資家がアジア全域を高リスクと判断す
れば、アジア経済全体が最終的な敗者になる恐れもあると警告した。
■中国の策略通りか、次は防空識別圏?
社会主義国のベトナムの対中政策は、同じく中国と領土問題を抱えるフィリピン
と比べ、融和的だとみられてきた。これについて、米シンクタンク「戦略国際問
題研究所(CSIS)」の東南アジア研究部門主任、アーニー・バウアー(Ernie
Bower)氏は、「ベトナムは中国の手法を学んで、餌に食いつかないよう相当な
努力をしてきた」と説明する。
だが今回の暴動の発生で、中国に持論を譲らない論理的根拠を与えてしまったベ
トナムは「中国の策略にまんまとはまってしまった」とバウアー氏。事実、訪米
中の中国人民解放軍の房峰輝(Fang Fenghui)総参謀長は15日、ワシントンD.C.
石油掘削を継続する考えを表明した。
バウアー氏によれば、中国が南シナ海で活動を活発化させているのは、昨年就任
した習近平(Xi Jinping)国家主席による中国の発言力を強化する戦略の一環で
ある可能性が高いという。
バウアー氏は、石油掘削装置の設置や船舶の衝突に続き、中国が次の手として南
シナ海(South China Sea)に防空識別圏を設定したとしても驚かないと指摘。
「習近平氏の真の姿が見えてきた」「今回の事態は、より大きな計画の一部であ
り、我々はこの先も挑発行為を見ることになるだろう」と語った。