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「いま帰宅されている都庁職員のみなさん。これまで新大久保で、
民族差別をあおる暴力的なデモが繰り返されてきました。私たちは、
東京都にこの問題への対応を求めて、毎週アピールしています―」
JR新宿駅から歩いて約10分のところにある東京都庁。毎週月曜か火曜の夜に、社会人を中心とした人々による街頭スピーチが行われている。
参加人数は通常40人ほど、多いときで80人前後になる。司会進行役がマイクを回し、
10人ほどが5分前後のスピーチを行うのだ。彼らや彼女たちはいったい何を訴えているのか。
現場に足を運び、話を聞いた。(取材・構成/松岡瑛理)
今年は、特定の民族への憎悪・差別感情を煽動する表現、いわゆる「ヘイトスピーチ」をめぐる問題が
メディアで大きく報じられたり、国会で取り上げられたりするなど、社会問題となった。
きっかけは、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)などが、東京・新大久保や大阪・鶴橋などで繰り広げている排外主義的なデモだ。
「朝鮮人を叩き出せ」「ゴキブリ」などといった過激な言葉を繰り返したこれらのデモは、
それに対抗するさまざまな「カウンター活動」も生み出した。
(中略)
この「都庁前アピール」もカウンター活動の一つで、有志でつくるグループ「差別反対東京アクション」が、
10月中旬から始めた。特徴は、行政を担う東京都に対して、
ヘイトスピーチを抑止する具体的な対応を求めていることだ。都庁前でのスピーチは、たとえばこんな内容だ。
「いい大人が『ゴキブリ』と言って、人を傷つけてるんだよ!
人間誰しも、自分が何人(なにじん)になるのか、選んで生まれてこれないんだよ!なんで止めないんだよ!」
11月下旬の都庁前アピールで、こう叫んだのは都内在住の西村直矢さん(34)。行政に対する憤りをストレートに表現した。
11月中旬には、在日二世の金正則さん(59)がスピーチに立った。庁舎に残る職員に向けて、
「デモで『在日を殺せ!』と言われますが、たとえば『都庁の職員と家族を抹殺しろ!』
と数百人が言い始めたら、どう感じますか。そういうリアリティを持った問題なんです」と、切々と述べた。
参加者たちはこんな風に代わる代わる「差別反対」への思いを、自らの言葉で表現していく。
彼らは、東京都にどのような対策を求めているのか。
「差別反対東京アクション」スタッフの手塚空さん(22)は、
「たとえば、学校での教育や公的機関を通じた啓発活動が考えられます。また、東京都として
『反レイシズム都市』を宣言することや、これらを行うためのヘイトスピーチ実態調査がありうるでしょう」と説明する。
とりわけ期待するのは、行政機関の要人が公的な発言を通じて差別・レイシズムを否定する「政府言論」だ。
東京都へのアピールでは、これらを含めた包括的な対策を求めていく予定だと、手塚さんは話している。
こうした街頭での訴えは、社会を動かしていくのだろうか?
「カウンター活動」を支援している神原元弁護士によると、都庁前アピールには少なくとも2つの意義があるという。
「1つは、これまであまり問題とされてこなかったヘイトスピーチについて、
意識的に『社会の問題』として目に見える形にしたことです。イギリスやドイツのようにヘイトスピーチを禁止したり、
刑罰を設ける国がある一方で、日本の現状は非常に遅れています。この点を市民が先行して突き、問題として提示したということです。
2つ目は、毎週1度、市民が自主的に集まり、アピール活動を行うという活動のスタイルですね。
(脱原発運動の)官邸前抗議で確立したこの形式が別の活動でも応用されるようになったことは、
市民社会の発達・転換にとって非常に有意義です。今後も、このような活動が活性化していくことが望ましいと思います」
都庁前アピールには、音楽もなければ、派手な仮装もない。コールに合わせてドラムが叩かれる程度だ。
都庁の職員に声が届いているのかどうかもわからない。そんななか、庁舎に向かって切々と訴え続けるストイックともいえる活動。
それでも彼らは、「差別反対」のメッセージを伝えるため、声を上げ続けている。
「若い世代は、ひどいデモが行われる世界のまま生活したくないです」。
10月下旬のアピールで、そう訴えた都内アパレル店勤務の折原麻美さん(24)。
人前に立つのは緊張するが、スピーチを始めると「感情が暴れ出した」という。
都庁前アピールについて「入りやすくて去りやすい雰囲気があるのがいい」
という折原さんは、今後も参加できるときに足を運ぶつもりだ。
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