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「配慮に欠けた面はあったが、速やかに働けるようにするのが目的で害意はなかった」
在日韓国人2世の金稔万(キム・インマン)さん(53)=兵庫県尼崎市=が
工事現場で働く際に通名(日本名)使用を強制されて精神的苦痛を受けたとして、
建設業者などに100万円の損害賠償を求めた訴訟があり、大阪高裁は11月26日の控訴審判決で、
請求を棄却した1審大阪地裁判決を支持して金さんの控訴を棄却した。
1審は通名強制自体を否定したが、2審は「通名使用を強いて金さんのアイデンティティーを侵害した」
と認めるなど金さんにとって“前進”はあった。だが、逆転勝訴を信じていた金さんは、
敗訴という結果に「裁判所も権利を認めてくれない現実を痛感した」と肩を落とした。
「前に一度行ったことがあるビルの解体仕事がまたあるけど」
日雇い作業員だった金さんのもとに平成21年9月、大手ゼネコンの2次下請け業者の担当者から電話がかかってきた。
ただし、「通名で行ってほしい」という条件付き。本名での生活にこだわっている金さんは
「通名でなく本名で行きたい。前に行ったときも本名だった」と強く主張した。
再び電話してきた担当者が「前にも行ったなら本名でいい」と一転したため、仕事を引き受けることにした。
業者の事務所へ向かうと、担当者が「やっぱり通名で行ってくれるか」と前言を撤回。
金さんは「本名で仕事がしたい」と訴えたが、すでに現場用ヘルメットに貼るための名前シールが
通名の「かねうみ(金海)」で作成されていた。
「(通名を)拒否すれば仕事ができなくなる」と不安になり、本名での勤務を訴えるのをやめた。
さらに業者側は、金さんのヘルメットに元々貼ってあった本名「きむ」のシールを剥がして床に捨て、
代わりに通名シールを貼った。金さんは本名シールを床に捨てられたことに
屈辱を感じて見過ごすことができず、すぐに拾ってポケットに入れた。
名前をめぐる争いはまだ続く。金さんは業者側の指示に従って書類を作成し、
氏名欄に本名を記入すると、担当者が通名に書き直すように求めてきた。
金さんは抵抗すれば仕事をできなくなると観念して書き直したが、氏名のうち「稔万」のふりがなは、
通名の「としかず」でなく本名の「いんまん」を貫いた。
解体現場の入退場管理システムに指紋登録する際にもトラブルが起きた。
この現場で最初に働いた半年前の21年3月には本名で登録を済ませていたが、
今回は通名で登録しようとしたため、指紋が一致するのに氏名が異なるとして「エラー」が表示されたからだ。
ただ、2審判決によると、金さんがこの場面で通名での登録を特段抗議したわけではなかった。
登録を担当した1次下請け業者の責任者は結局、エラーを解決するため本名のデータの方を削除した。
ここで疑問がわく。金さんが最初に働いたときは本名だったのに、なぜ半年後には通名でという条件になったのか。
判決によると、それは大手ゼネコン側の「誤解」が発端だった。
(続く)
URLリンク(sankei.jp.msn.com)
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