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中国・瀋陽を訪ねて(上)国家は反日、しかし… 2013年11月23日
この秋、中国東北部の遼寧省を訪ねた。県日本中国友好協会の同行取材、県と省が友好提携を結び30年を記念した訪中だった。
日本政府が沖縄県・尖閣諸島を国有化して1年余り、両国関係はかつてないほどに冷え込んだままだ。
かの国で垣間見た「反日」の現実は-。
(中略)
バスを降り、日本総領事館に向かう。ちょっと身構えた。領事館は昨年9月の反日デモで窓ガラスを約70枚割られていた。
奉天は1931年の満州事変の発端となった柳条湖事件の舞台だ。それだけ「反日」の空気が強いのだと思っていた。
出迎えた大澤勉総領事は首を横に振った。「日本人が危害を加えられたことはないし、今後もないでしょう」。
続けて「企業進出のラブコールは毎日寄せられている。民間や地方レベルでは交流は今も盛んです」。拍子抜けした。
日本企業の駐在員や在留邦人でつくる「瀋陽日本人会」事務局長の石井伯彦さんによれば、
タクシーの乗車拒否が何件かあったが、「それも一時的。『日本製品を買うな』と貼り出した店でも、
日本製のカメラが売られている。反日は政治的なポーズ」。
(中略)
夜。吉野家に入った。言葉が通じないと分かると男性店員が身ぶり手ぶりでメニューを説明してくれた。
一生懸命な姿はうれしくもあった。変わらぬ味にホッとしながら、思う。この国のどこが反日なのだろう、と。
◆「地殻変動に目を向けよ」元県日本中国友好協会会長・久保孝雄さん
県と遼寧省との友好提携は、民間交流で平和親善を図る「民際外交」を提唱した故・長洲一二知事時代の1983年に結ばれた。
長洲県政で副知事を務めた久保孝雄さん=元県日本中国友好協会会長=に日中関係の課題を聞いた。
-中国の台頭をどう見るべきか。
「米国国家情報会議の報告にあるように、2030年までに中国の経済が米国を凌駕し、
欧米の時代からアジアの時代となる。壮大な地殻変動が起きていることを知るべきだ。
これに盲目だと、日本がどう生きていくべきか見極められない」
「ところが『米国が衰退し、中国が世界一になるなんてあり得ない』との考えが日本には根強い。
政治家や評論家、マスコミが構造的変化を認めたがらないところに問題がある」
-なぜ認めたがらないのか。
「戦後、日本の国体(国の基礎的な政治の原則)は天皇制から日米同盟、日米安保体制へと変わった。
今、中国の台頭を一因に米国の力が弱体化している。これは日本にとって国体が崩れることを意味し、
構造的変化を認めることが最大の恐怖となる。日本は衰退する米国を支えようと対米従属を一層深めている」
-日本にはどういった視点が必要か。
「国の命運を米国に任せることが国益を守ると信じてきた。その結果、米国やその属国とみなされている日本が、
世界にどう映っているのかという複眼的思考がない。ロシア、中国、韓国、北朝鮮の近隣諸国がどう見ているのかが重要だ」
-市民レベルではどういう意識を持てばよいのか。
「政府レベルとは分けて考えるべき。日中の自治体同士の友好提携は約360組。
これほど厚みのある交流がある相手はほかにはない。
政府間の関係が悪化すると交流を遮断していた中国も、最近は民間交流は継続する姿勢に転じている」
「県は遼寧省と公害防止や中小企業の技術移転などで喜ばれてきた。
先行する少子高齢化や介護・福祉分野で中国が日本に学ぶべきことは多い。
本音では日本の科学技術や文化を尊敬している。今後も交流を大事にしてほしい」
●くぼ・たかお
東京外国語大中国語学科卒。1975年、長洲知事の政策スタッフとして県庁入庁。県理事を経て87~91年に副知事。
91~99年にベンチャー企業を支援する「かながわサイエンスパーク」を運営するケイエスピー社長。
2000~12年、県日本中国友好協会会長。84歳。
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