13/09/10 10:16:20.18
7年後の夏、東京に再び聖火がともる。
第2次大戦以降で、夏季五輪を2度開く都市は、ロンドンと東京しかない。
前回の1964年大会は戦後の復興を象徴した。人も仕事も増え続け、新幹線や高速道路が開通した。
先進国入りをめざして突っ走る時代を告げた。
いまの日本は、様相が違う。少子高齢化に財政難の時代である。高度成長期と同じ夢を追いかけることはできない。
都市も社会も成熟期を迎えた今、インフラではなく、人に資産を残す五輪を提唱したい。
豪華な施設はもう要らない。長い目で活用できる最小限で十分だ。投資を注ぐ対象は、若者たちの心にこそある。
昨夏のロンドン五輪は204カ国・地域が集まった。日本にいながらにして世界がやってくる。
人も文化も混じり合う世界の息吹を体験し、記憶に刻み、思考を広げる機会となろう。
参加者は選手だけではない。語学を磨いてボランティアになってもいい。観客としてでもいい。
話題の選手を育んだ異文化に思いをはせる場を、家庭で、学校で、地域で、広げたい。
五輪は「平和の祭典」でもある。外交関係が揺れる中国や韓国ともわだかまりなく交流できる雰囲気作りは欠かせない。
一緒に夢を紡ぐ若者らの輪に国境の壁があってはならない。
直前の2018年には韓国・平昌で冬季五輪がある。世界の目が韓国と日本に続けて注がれる好機を逃さず、
官民挙げて未来志向の友好をめざしたい。
国内に目を向ければ、東京の一極集中ではいけない。国際オリンピック委員会(IOC)では、大震災からの復興という理念に共感し、
票を投じた委員も多かった。東北地方の再興はもちろん、日本全土で五輪の恩恵を分け合う工夫が必要だ。
前回の東京五輪のころ、都内の15歳未満の年少人口は65歳以上の5倍もいた。今は老年人口の約半分しかいない。
多くの国もいずれ同じ道をたどる。高齢化時代のスポーツの意義を先取りする社会像をめざすのも、これからの五輪ホストの使命と考えるべきだろう。
お年寄りや障害者も幅広く息長くスポーツと親しめる環境作りが求められる。パラリンピックにふさわしい街のバリアフリー化も急務だ。
そして、人種も国籍も関係なく気軽に街で助けあえる心の余裕を育てたい。
21世紀の新しい五輪の姿を示す成熟国家の力量やいかに。世界へ発信する真のプレゼンテーションはこれから始まる。
ソース 朝日新聞
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