13/09/01 00:47:45.51
日本と中国、韓国との関係がかつてないほど悪化している。谷野作太郎・元駐中国大使(77)は冷戦崩壊後の対アジア外交の最前線に立ってきた。
従軍慰安婦に関する「河野談話」、戦後50年の「村山談話」の作成にも携わった谷野氏は現状をどう見ているのか。前編は尖閣問題について聞く。【浦松丈二】
◇歴史的には日台中の「共通の生活圏」だった
?非営利団体「言論NPO」が今月まとめた日中共同世論調査では、相手国に「良くない印象を持っている」と答えた人の割合が日中共に9割を超えました。
谷野 日中両国の将来を考えてさまざまな交流事業に携わってきた日本側の関係者は、ひとしく強い挫折感を味わっているのが現状だと思います。
もっとも、こういう時こそ両国関係に民(たみ)の力、若者の力、地方の力を注入しなければなりません。中国でも困難に直面した時、
「以民促官(民の力をもって頭の固い政治家や中央の役人たちを動かそう)」ということがよく言われますからね。
尖閣の問題については、日本は筋を通して対応していくことが重要です。
しかし、あの島の問題に大切な日中、中日関係が乗っ取られるようなことがあってはならない。
両国の政治リーダーたちがその思いを共有して知恵を出し、勇気を持って今のトンネルを抜け出してもらいたい。
それにしても日中関係に深く霧が立ちこめる中で、反中、嫌中報道を競い合う日本の一部メディア、週刊誌はちょっと異常ですね。
最近はこれに加えて嫌韓・反韓。ひとたび風が吹くと一斉にそちらになびく。戦前を思わせるという人さえいます。
無論、マイナスの材料を提供する中国、韓国も悪いのですが。
でも、ある日本メディアのOBは最近の日本国内の中国報道について
「大きな声の陰にかくれた小さな声、理性的な意見を拾い上げる努力を怠り、国民感情のバランサーとしての役割を放棄している」
と話しておられます。世論調査の結果もそのようなメディア報道に多分に影響されているのでしょう。
?谷野さんは退官後、青少年交流などさまざまな日中交流事業に携わってきました。
谷野 今回の尖閣のように日本の対応が意にそわないと「政治」が前面に出てきて、本来関係のないいろいろな交流までも止めるという
中国のやり方には強い違和感を覚えますね。各界有識者による新日中友好21世紀委員会も中国側の意向で止まってしまっています。
今のような時期こそ、相手がどう考えているかを知る上でこのような交流は必要なのですが。
私が関わってきた日中青少年交流事業は1回に200人、300人のオーダーで学生たちを受け入れるため、その準備は大変です。
苦労して交流パートナー校を見つけ、ホームステイ先も決めていく。準備万端整ったところで突然、
中国側から延期、中止と言ってくる。すると、受け入れ先は「これからは中国からの受け入れはもう辞退したい」となる。
日本のそこかしこに嫌中感情が広がってしまう。何とも残念なことです。
?尖閣問題は日中双方が主張を言いつのり、両国関係に大きな摩擦、不利益が発生しています。
谷野 中国の主張で違和感を覚えるのは、この問題を「歴史の屈辱」の文脈に置いたことです。
日本は1890年代、弱体化をたどる清朝の弱みにつけ込んで、あの島を「盗み取った」と。
こう言えば中国の人たちの胸にストンと落ちるだろうということなのでしょうが、在日中国人の私の友人にも
「あれは言い過ぎ。何ら生産的な議論に結び付かない」と内々に漏らす向きがあります。
尖閣については日本の主張を中国に、そして国際社会に訴えていくのは言うまでもないことでしょう。
「解決すべき領有権の問題は存在しない」が日本政府の立場です。これはくしくも竹島について韓国政府が取っている立場と同じです。
しかし、ここで韓国と日本が違うのは、韓国は何とブータンのようなところにおいてまでテレビの時間帯を買い取って
「独島は我らの島」と領有権を宣伝しています。尖閣の国際PRの点で日本は
「解決すべき領有権の問題はない」「従ってPRの必要もない」ということでおとなしすぎました。
もっとも最近は日本政府も、この点では随分変わったようですが。
(続く)
URLリンク(mainichi.jp)
URLリンク(mainichi.jp)