13/08/01 21:01:41.36
少し前のことだ。関西を拠点に活動する在日コリアンの女性ライターと一緒に、
大阪・鶴橋（生野区）でおこなわれた「嫌韓デモ」を取材したことがある。
彼女は自らの立ち位置を明らかにしたうえで、それまでにもレイシズムを批判する多くの記事を書いてきた。
当然、デモ参加者の多くは彼女のことを「敵」として認知している。
だからこそ、私は彼女がデモ隊から名指しで批判されないかと心配だった。
案の定、デモはいつものごとくひどいものだった。「朝鮮人殺せ」「朝鮮人は人間じゃない」
といったシュプレヒコールが飛び交い、デモ隊はコリアン集住地域を練り歩いた。
しかし、私が危惧していた女性ライターへの「個人攻撃」はなかった。
「よかったね。名指しで攻撃されなくて」
デモ終了後、私は彼女に軽い気持ちで声をかけた。
すると、彼女は私を睨みつけ、一気にまくしたてた。
「私、ずっと攻撃されていた。名指しかどうかなんて、関係あらへん。
死ね、出てけって言葉は全部、朝鮮人である私に向けられてた。そんなこともわからんの？」
返す言葉もなかった。彼女の顔に浮かぶ恐怖と怒りのまなざしを正面に見据えて、私は沈黙で応じた。そうするしかなかった。
彼女の言う通りなのだ。デモ隊の矛先は、彼女を含む在日コリアン全体に向けられている。
けっして抗弁できない属性そのものが罵倒、攻撃されているのだ。
さらに言えば、国籍の別なく公平性が担保されるべき社会そのものも攻撃されているとも考えるべきだった。
こうした差別は、すべての在日コリアンのみならず、社会全体の問題でもある。攻撃されているのは彼女であり、
在日コリアンであり、私を含む日本社会なのだ。ヘイトスピーチこそ、社会の敵なのである。
いま差別と闘うために、多くの人が立ち上がっている。
今年に入ってから、在特会などが主催するデモでは、「カウンター」と呼ばれる抗議活動が活発化するようになった。
「差別反対」「ヘイトスピーチ阻止」を目的に、多くの人が体を張ってデモ隊と対峙する。
「レイシストは帰れ」とプラカードを掲げて沿道に立つ者、中指を立ててデモ隊に罵声を飛ばす者、その抗議スタイルは様々だ。
「憎悪の連鎖は何も解決しない」
「日本の恥 在特会はレイシスト集団」
デモ隊の行く手を阻むように掲げられた大きな横断幕も、おなじみの風景となった。
最近ではデモ隊の数をはるかに上回る人々が、抗議のために「現場」へ集まる。
数百人の「帰れコール」がヘイトスピーチをかき消すことも珍しくない。東京でも大阪でも、
いま、レイシスト集団がデモを実施すれば、そうした抗議の洗礼を受けなければならない。
私はそこに、日本社会に残された「健全性」を見る。差別的なデモを黙って見過ごすような社会であっては、
レイシストの思うつぼではないか。差別されている側だけでなく、差別の存在を許せないと思う者たちが集まり、
レイシストを罵倒する。これが社会の「常識」だとさえ私は考えている。
抗議のため、ときに下品な言葉も用いる「カウンター」に対し、批判的な声も存在する。
「カウンターによって騒乱状態が持ち込まれた」と渋い表情を見せる人もいる。
だが、社会の秩序を乱しているのはどちらなのか。在特会などのレイシスト集団はこれまで、
「朝鮮人は死ね、殺せ」と叫びながら街頭を練り歩いてきた。「朝鮮人は首を吊れ、毒を飲め」と扇動してきた。
これを放置することこそ、私は「日本の恥」だと思う。
もちろん差別の「現場」は新大久保や鶴橋だけではない。日本社会のあらゆる場所で、
あらゆる差別が横行している。そのひとつひとつに向き合うことは、社会を構成する者の責任だ。
だからこそ、まずは視界に入った差別から抗議の声を上げていくことは、非常に大事なことだ。
ヘイトスピーチは「犯罪」である。社会に憎悪と偏見、差別を持ち込み、人々を分断させるものだ。
だからこそ、私たちは声を上げなければならない。「Ｎｏ Ｐａｓａｒａｎ！」（奴らを通すな）。いまこそ社会の「意志」を見せるときだ。
URLﾘﾝｸ(news.onekoreanews.net)
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