13/06/18 21:12:41.03
ネット右翼などと呼ばれる人々が、在日コリアンなど外国人を「殺せ」と叫ぶような街頭デモを頻繁に行うようになった。
人種差別に基づく言葉の暴力「ヘイトスピーチ」(憎悪発言)を放置していいのか。東京造形大教授の前田朗氏にその背景と対応策を聞いた。
―ネット右翼とも呼ばれる「在日特権を許さない市民の会」(在特会)などが現れた背景は。
「ネットで社会への不満やストレスをぶつけていた人たちが、外に出てきたということ。
かつてのような政治的な対立構造が見えづらくなっている中で『在日朝鮮・韓国人』という共通の敵を見いだし、
そこに飛びついて批判を始めた。
当初は従来の在日コリアンや外国人への差別の延長線上にあるものとして見ていたが、内面の不満の発散が主な目的という特徴もある」
―内面の不満とは。
「日本が経済的に困難な状況に直面する中で、就職難やリストラなどにより、自らの将来像を描けないといういら立ちが広まった。
一方で、恵まれた人たちにとっては『豊かな日本』のままであり続けている。社会的格差の拡大も大きな要因だ」
―在日コリアンへの激しい攻撃につながるのはなぜか。
「逆差別を受けているという発想だ。『日本に住まわせてやっている在日朝鮮・韓国人のくせに、日本に対してさまざまな権利要求をする』
『さまざまな分野に進出して、自分たちを圧迫している』と。明らかにゆがんだ発想だが、被害意識の下にそうした理屈が共有され、
怒りの表明と称して『殺せ』といった言葉を用いるヘイトスピーチ(憎悪発言)につながっている」
―法規制すべきか。
「まずは、罰則のない人種差別禁止法をつくるべきだ。これは、日本も批准している人種差別撤廃条約で要請されていることでもある。
こうした差別はいけないと国が明確な姿勢を示せば、行政指導も出しやすいし、この法に基づき民事訴訟も起こせる。
そのうえで、例えば10年たっても差別が横行していれば、次の段階として刑罰の導入を議論すればよい」
―表現の自由との兼ね合いは。
「表現の自由に入る前の問題がある。実際にヘイトスピーチの被害があるのかという問題だ。日本政府も憲法学者も、
被害があることを認めようとしない。『差別発言があった。差別の扇動もあった。しかし被害はない』という立場だ。
それでは議論が進まない。『不愉快』『怖い』という感情レベルを含め、被害は厳然と存在する。
在特会などのデモに対して、市民の側がデモで対抗するという動きもあるが、本質的な解決にはならない。
市民の力だけで解決できる問題なら、世界各国は人種差別禁止法など制定していないはずだ」
―欧米では法規制をしている国が多い。
「欧州も50年かけて社会意識を変えてきた。ネオナチ対策から始まり、試行錯誤しつつ取り組んできた。
欧州連合(EU)の中では、ここ10年で法規制に取り組んだ国もある。時間をかけてでも、日本は人種差別問題に取り組む必要がある」
―議論が進まないのはなぜか。
「欧州でもそうだが、異なる存在を受け入れてより寛容で開かれた社会にするためには、大きな行政的、社会的な負担が要る。
それに耐えられるような態勢をつくり、教育もして予算もかけて、なおかつ自分たちにプラスになるという社会的合意のもとでやらないと難しい。
日本の現状は、そうした合意ができる前に、多文化共生という概念が消滅してしまうのではないかと危ぶんでいる」(聞き手 佐藤大介・共同通信記者)
× ×
まえだ・あきら 55年札幌市生まれ。中央大大学院博士課程単位取得退学。 90年より東京造形大で教える。
戦争犯罪論、刑事人権論。日本民主法律家協会理事。著書に「ヘイト・クライム」など。
URLリンク(www.47news.jp)
URLリンク(img.47news.jp)