13/05/08 13:10:14.53
9条の叫び 神奈川から改憲を問う<4> 多民族共生 憲法の縮図
◆神奈川大教授 阿部浩己さん
中国や北朝鮮、韓国などの多くの外国人がともに暮らす一方、各地に米軍基地を抱える神奈川。
この場所で、憲法九条はどんな意味を持つのか。神奈川大学法科大学院の阿部浩己教授(54)=国際人権法=に聞いた。
阿部教授は「私たちは基地を抱えたまま、憲法の理念を生かし、
多民族と共生するという矛盾した行動を取っている。神奈川は憲法の縮図だ」と指摘する。
阿部教授は、九条が代表する憲法の特徴を「世界全体を視野に入れ、
民族や文化が異なる人たちの視点を織り込んだ点と、日本の戦争の歴史を刻み込んだ点」だと評価する。
「日本は過去の戦争の歴史を乗り越えるために、
非暴力で、他民族、他文化の人たちとともに生きていく方向性を打ち出した」と、背景を説明する。
他国でも「憲法は悪いことをした後、反省してつくられる。かつてアパルトヘイト(人種隔離)の国だった南アフリカ共和国は、
アパルトヘイト政策の廃止後に制定した新憲法で、人種差別を禁止するため、他の国にないような細かい人権規定を書き込んだ」
と、似たケースがあることを指摘する。
その上で「日本人は常に目の前の現在だけを考え、歴史と向き合わない。
原発再稼働の動き、中国や韓国との領土摩擦、沖縄の基地問題。
これらは、過去の歴史と相手側の視線を考慮しないため、繰り返された問題だ」と警鐘を鳴らす。
県内では、黒岩祐治知事が、北朝鮮の核実験に抗議し、朝鮮学校向け補助金を本年度予算に計上しなかった。
阿部教授は「これは共生よりも、敵が誰かを名指しする動きだ」と批判。
「敵国と同盟国を色分けし、憲法九条の絶対平和主義を変えようとする全国的な動きと、神奈川の状況は相似形に見える」と分析する。
対照的に、憲法が目指すのは「平和をリードするために、清濁あわせのむ度量の大きい国」だと、阿部教授は読み解く。
「武力で白黒付けたがるのは、激情的で稚拙な発想。非暴力で紛争を解決するには、摩擦に耐えて交流する老練な力が必要。
摩擦のない人間関係はない。国交も同じ。多民族社会の神奈川は、それを実践する格好の場だ」と強調する。
しかし、こうした共存の論理と相いれないのが、武力の論理を象徴する基地の存在だ。
阿部教授は「基地はもちろんない方がいいが、物事は簡単には進まない」と前置きした上で「基地の脱力化」を唱える。
「基地の必要性を低下させ、兵隊を置かなくてもいい状況を目指す。
中長期的には、憲法の老練な力が基地の脱力化に貢献すると思う」と予測する。
ただし、米軍が戦争する相手が、従来の国家から、米国が指定する「テロリスト」に変質している点には、危機感も隠さない。
「テロリストと呼ばれる彼らにとっては、米軍のいる場所が戦場だ。横須賀基地も厚木基地も狙われる可能性がある。
それでも米国に協力した方が安全なのか。私たちは自分の頭で考えた方がいい」(新開浩)
URLリンク(www.tokyo-np.co.jp)