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おカネの供給残高を来年末までに2倍に増やすという、日銀の異次元で大胆な金融緩和政策により円高是正に加速がかかった。
これに対し韓国と中国は警戒を強めているが、円安は周辺アジアにどのような衝撃を与えるのだろうか。
グラフを見よう。衆院解散が決まった昨年11月16日の1ドル当たりの相場を100としてみたアジア各国の通貨の4月5日までの推移である。
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それまで独歩高だった円は下落に転じ、中国人民元を中に包み込むようにして小幅に変動する各通貨からどんどん遠ざかる。
円相場は円高のピーク時に比べ25%も下がった。
アジア通貨危機前の円安は、1997年5月までの2年間で円の対ドル相場が約3割安くなったのに対し、
アジア各国は基本的にドルに対する自国通貨相場をくぎ付けする「ペッグ制」をとっており、日本円に対して3割前後高かった。
この間、円より強い通貨での資産運用をもくろむ海外からの短期資金流入で、不動産や株価が上昇を続けた。
ところが、通貨が過大評価されているとみたヘッジファンドが突如、現地通貨の投機売り攻勢をかけた。
すると東南アジアの経済と金融を支配する華僑・華人系資本による資本逃避が起き、各国通貨が暴落。
インドネシアでは経済ばかりでなくスハルト大統領(当時)による独裁体制も崩壊した。危機は韓国にも飛び火し、通貨ウォンが崩落、一部大手財閥が消滅した。
今回も、急速な円高是正は共通するが、東南アジアの場合はペッグ制をやめて、変動相場制など通貨を柔軟に変動させる仕組みに変え、
ヘッジファンドなどの通貨投機勢力が入り込みにくくした。さらに、日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN)は、
外貨など通貨の相互融通制度を柱とする「チェンマイ・イニシアティブ」で緊急時に協調する体制を組む。このため、円に比べて通貨が割高になっても、
投機勢力に対する防御体制は整備されていると評価できる。インドネシア、タイなど東南アジア各国はアジア通貨危機当時のような逃げ足の速い資金ではなく、
日本企業などの直接投資中心の外資受け入れに重点を置いている。
ところが、韓国と中国の場合は趣を異にする。韓国の場合、外国マネーへの依存度が極めて高いことだ。韓国はアジア通貨危機後、
海外投資家の韓国企業への株式投資を受け入れてきた。その結果、海外の韓国株保有残高は昨年末時点で国内総生産(GDP)比31%に達している(アジア危機前は3%程度)。
海外からの借入残高のGDP比は11.5%(同15%)と依然高水準だ。米欧などの投資家は韓国ウォンが円に対して安くなれば日本株を売って韓国株を買い、
逆にウォン高になれば韓国株を売る運用方法をとっている。このため、円がウォン以上に対ドルで安くなればなるほど、韓国株は売られ、資本が流出することになる。
つまり、日韓の経済は「共栄」というよりも、一方が浮上すれば他方が沈む「ゼロ・サム」関係にある。
円安に対抗してウォン安政策をとるためには、金利を大幅に下げる金融緩和策が必要だ。そうすると海外の金融機関は韓国から融資を引き揚げる恐れがある。
そこで韓国では、円安を促進するアベノミクスや黒田日銀の金融緩和に危機感が高まっている。
一方、中国の実体経済は実質ゼロ成長状態にある。中国政府は昨年の実質成長率を7.8%、今年の成長率目標を7.5%前後としているが、
中国の経済統計のうちで最も信頼性の高い鉄道貨物量は昨年は前年比マイナス0.7%で、今年1、2月の合計でも同0%と低迷している。
つまり、中国はモノを前年より多く生産しても、多くの製品を工場の外へ出荷していないわけで、鉄鋼、家電、
自動車など大半の主力業種で過剰生産と過剰在庫が膨らんでいると推定できる。
大量の廃棄物を生み出し、「PM2.5」に象徴されるような汚染物の排出も放置されるわけである。
昨夏からの尖閣諸島の領有権をめぐる日中関係の悪化に、円安進行が加わり、今後日本企業の対中投資の減速は拍車がかかるだろう。
米企業の間でも、中国の人件費上昇などを考慮して米国内に回帰する動きも出ている。
中国は流入している海外からの巨額の投機資金が一斉に流出する恐れがあるので、人民元を切り下げできない。
円高是正は図らずも、中韓それぞれの構造問題を浮き上がらせている。
編集委員・田村秀男
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