12/12/27 11:02:07.05 BYpInJK5
>>387
大丈夫、昭和9年の物理屋もマスコミに苦言を呈しているからw。
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抽出
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ある役所で地方技術官の集合があって、その第何日目かに大臣が出席して演説する予定になっていたところ、当日さしつかえができて大臣は欠席した。
しかしその日の夕刊を見ると大臣がちゃんと出席して滔々(とうとう)と演説をしたことになっていた。
ある若い学者がある日ある学会である論文を発表したその晩に私の宅(うち)へ遊びに来てトリオの合奏をやっていたら、
突然某新聞記者が写真班を引率して拙宅へ来訪しそうして玄関へその若い学者T君を呼び出し、その日発表した研究の要旨を聞き取り、
そうしてマグネシウムの閃光(せんこう)をひらめかし酸化マグネシウムを含んだ煙を玄関の土間に残して引き上げて行った。
翌朝の新聞に宅の下手(へた)な合奏の光景が暴露されているかと思って読んでみると「……同学士をH町の自邸に訪(と)えば」うんぬん、
とあって、ちゃんとそのT氏の自宅においてT氏と会談したことになって記述されていたのである。
この二つの実例から見ても新聞記事にはちゃんとした定型が確立されていて、いかなる場合にでもそれを破ることが禁ぜられているらしく思われるのである。
自分らのようなつむじ曲がりの読者にとっては、むしろ来るはずの大臣がその日来なかったという偶然の個別現象に興味があり、
また論文を発表したある若い学者がちょうどその晩よそへ遊びに行ってそこで合奏をやっていた事実に意義を認めるのであるが、
それを事実有りのまま書いたのでは、ジャーナリズムの鉄則に違反するものと見える。こういう事実を初めて発見してひどく感心してしまったことがあったのである。
このジャーナリズムの一相と見らるる「事実の類型化」はある意味では確かにうそをつくことであるが、しかしまたよく考えてみると、
これは具体的個別から抽象され一般化された規準的事実の記述だと解釈されないこともない。
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