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「尖閣」に埋もれた民間大使＝日中「新風」の試み挫折
【北京時事】異例の「民間駐中国大使」として伊藤忠商事相談役だった丹羽宇一郎氏が起用されて２年４カ月。２８日に帰任する丹羽氏が
２６日の記者会見で「尖閣に始まり尖閣に終わる」と漏らしたように、２０１０年９月の中国漁船衝突事件と、１２年９月の日本政府による国有化
という二つの「尖閣諸島問題」の中に、「日中は引っ越しできない関係だから仲良く」という丹羽氏の持論は埋もれた。日中関係に「新風」を巻き
起こす試みは挫折した形となった。
１０年７月末に着任した丹羽氏の人事は、民主党政権の「政治主導」の目玉として当時の岡田克也外相が主導。チャイナスクールと呼ばれる
外務省の専門家集団が中心となる対中外交の世界に「『政治主導』を持ち込むと国益を損なう」（元駐中国大使）との懸念が強く、元大使らは
「素人では（尖閣など）安全保障問題で毅然（きぜん）とした対応が取れない」と警告してきた。
丹羽大使が今年６月、英紙インタビューで東京都が尖閣諸島を購入すれば「日中関係に極めて深刻な危機をもたらす」と発言し、懸念は現実
となった。日本政府関係者らからも「（丹羽氏の指摘は）正論だが、外交官と違うので国益に対する認識が甘く、評論家の発言になっている」との
批判が相次いだ。
一方、「これだけの日中の危機はプロの外交官でも打開できない」（日中関係筋）との同情論が多いのも事実だ。そうした中で「現場主義」
（丹羽氏）に徹し、中国３１省・自治区・直轄市のうち２７地域を回り、「日本の魅力を中国に伝えることを心掛けてきた」（同）というのは、日本の
実情を知る民間大使だから推進できた結果とも言える。
日中国交正常化４０周年を記念し、９月初めに北京で開かれた日本の夏祭り大会の際も、自身の乗った公用車が襲撃される事件の直後にも
かかわらず、盆踊りに参加するなど特色も出した。日中関係が順調なら「実務は官僚に任せ、象徴的存在として大使を前面に国民感情の改善を
図れる」（中国人研究者）との期待も高かっただけに、最悪のタイミングでの民間大使を悔やむ声も多い。
jiji.com: 2012/11/26-18:43
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