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中国は明らかに、民主党政権下の日本を見くびっていた。最初の鳩山由紀夫政権は東シナ海を「友愛の海」
だといい、米国排除の「東アジア共同体」を提唱して中国にすり寄った。続く、菅直人政権は尖閣周辺海域で
起きた中国漁船体当たり事件で、「中国配慮」から容疑者の船長をあっさり帰国させた。
中国当局が抱く民主党政権のイメージは「脅せば屈する日本」の姿であった。それが尖閣国有化で対日圧力を
呼び込む遠因になっていただろう。「スキあらば盗む」中国流である。
ところが、野田佳彦首相は9月26日に「尖閣では半歩も譲らない」との姿勢を強調した。自民党の安倍晋三
総裁は、今月15日に来日した米国務省のバーンズ副長官には「尖閣で妥協はあり得ないことを明確に中国に
伝えてくれ」と述べた。野田政権の尖閣諸島への対応や、安倍総裁発言に、中国も戸惑う気配がある。
時に強硬な意見を吐く9月25日付環球時報の社説は、「日本のポーズや言葉で日本の軟化を読み取るものも
いるが、これは願望にすぎない」と長期化の覚悟を示した。10月12日付の環球時報になると、わざわざ香港の
太陽報を引いて「領海争いは南シナ海が先」と転電し、前線の南シフトを主張した。
「中国の今の実力では、領有権をめぐって全方向に出撃するのは不可能だ。日本との争いはとりあえず沈静化して、
まずはフィリピンと対峙(たいじ)すべきだ」
中国は圧力をかけた相手国がひるみ、国際社会が反応を示さなければ、一層、理不尽なやり方で自国の利益を
拡大しようとする。逆に相手国が断固として抵抗し、国際社会の中に批判が渦巻けば、一時的には後退していく。
これは19世紀の世界に跋扈(ばっこ)した帝国主義の特徴と同じである。元外務省主任分析官の佐藤優氏は、
帝国主義がまれに国際協調に転ずるのは、批判を避けるための一時的な退避で「状況が変わればまたその繰り
返し」と述べる。
今後も中国は日本の反応を見るために、国家海洋局などの監視船を尖閣周辺に送り、海軍艦船を与那国島
などの接続水域を航行させるだろう。恫喝(どうかつ)が常態化するなら、日本は何度でもはね返すだけである。
中国への嫌悪は、尖閣問題だけでなく、南シナ海の東南アジア諸国連合(ASEAN)でも広がり、中国の四面
楚歌(そか)状態が続いている。今月5日にフィリピンで開催されたASEANと日米中韓などによる拡大海洋
フォーラムで、中国は「海上協力基金」の名目でポンと30億元(約370億円)を拠出した。
米紙ワシントン・タイムズからは、とたんに「中国はカネで影響力を買った」と皮肉られた。日本とASEANが手を
結ぶ「反中同盟」につながることへの警戒感がそうさせたと同紙は指摘した。ところが中国内では弱腰批判を恐れて
“手みやげ”を明らかにしなかった。だが、そこは外交上手のベトナム代表である。記者会見で暴露した。
CNNテレビ香港のウィリー・ラム氏に言わせると、中国は「資源パラノイア」であるという。採算や危険を度外視して、
世界の石油権益を買いまくる。中国民衆の生活水準が上昇を続ける限り、共産党の一党独裁を許容すると
考えるからだ。武力行使も辞さない強引な姿勢は、すっかり「無責任な当事者」のイメージを定着させた。
(東京特派員)
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