12/01/27 01:00:01.34
(>>1の続き)
■スターに抱きつく人、他人を突き飛ばす人
・・・禁止、はないよなぁ、せめて、ご遠慮ください、でしょとそのパニックを眺めた。「人数が多いんです!握手は禁止!」と繰り返し
叫ぶのは、それほどルール違反をするファンも多い、ということだ。
違反は見事だった。シャッターを切る直前に、スターに抱きつく人。シレッと両肩に手を乗せる人。後ろの人にかぶさってスターの横に
平然と並ぶ人。「なにすんのよっ」と突き飛ばす人。真正面からプレゼントを渡し、会話を試みる人。高齢であることを武器に
「いたわれ」と、憐みを強要する人。「杖をついて来たのだから」と握手を求める人。その都度、スタッフの「禁止」絶叫の波が会場に
うねる。
正月の福袋の取り合いどころではない。ファンの集いのクライマックスは、利用できるものはなりふり構わず利用する欲望の修羅場
と化した。
おそらく、冷静なファンなど、似非(えせ)だ。ファンとはこのように自らの欲望に突き動かされるままに行動する人を指し、そのために
スターが辛かろうがしんどかろうが関係ない。
発情・欲望・エゴ。私はファンの3大要素を発見した。人を魅了するとはこういうことだ。理性を放棄させるほど魅了して初めて、
利益が上がるビジネスになる。ステージで繰り広げられる修羅場は、ファンイベントよりもよほど刺激的で興奮し面白かった。
そして、私の番が来た。
「私はあの修羅場の一員にならないからね」と豪語し、賢いファンたらんと気合を入れ、列に並んだ。私は最後の撮影グループに
なった。そのうえ、列の一番端だった。スターの横顔を遠くから「ふーん」と眺めた。
■スターは立ち止まり、私の目を見て…
撮影が終わると、最後とあって、待たされたぶんファンはヒートアップして乱れた。もはや修羅場ではない。乱交に近い。いや、レイプか。
人間の正直な姿を感嘆の思いで眺めている私に、スタッフにガードされ帰ろうとするスターが気づいた。
スターは立ち止まり、私の目を見て、制止するスタッフの腕の隙間から私に手を差し伸べた。
「え?」と戸惑う私に、スターは2度、私を見たままうなずいた。
「おいで」と目が言っていた。
「うそ・・・」
私は近づき、…彼と握手した。
にっこり微笑み、彼は去った。
知人がそんな私を見て、「私も!」と握手を試みたが、他のおばさんに突き飛ばされた。
あの日から私もまた、発情と欲望の境地に踏み入った。もしまた彼が来日することがあれば、赤のスパンコールの衣装を着かねない
危うさを自身に感じる。
「好きくらいじゃダメなの。会場を満杯にするには、魂を鷲掴みにするほど魅了しなきゃリピーターで来てくれない」と、知人の宝塚
トップスターが私に言ったことがあった。
ある画商は、「きれいな絵、気持ちいい絵、くらいじゃだめなんです。魂を鷲掴みにされた人は、他の客に取られたくないからその
画家の作品を何枚も買うのです。きれいな絵は一枚買ったら、それで終わりです」。
韓流がすごいのではない。そこまで人の心を鷲掴みにできるレベルにまで成功したビジネスが稀だから韓流が目立つにすぎない。
娯楽もビジネスで、そこにもヒントがあることを思えば、韓流にハマることもまた無駄ではない。せいぜい仕事に生かしていただきたい。
(終わり)