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「選挙で選ばれていない裁判官が国民の信頼を得られなければ、裁判の当事者である国民が裁判
の結果を信頼できるだろうか」
ソウル高裁の李漢周(イ・ハンジュ)裁判長(55)=写真=は27日、裁判官専用の掲示板に、A4サイズ
の紙13枚分の文章を掲載した。「裁判官の皆さん、共に考えてみよう」と題したこの文章で、李裁判長
は▲裁判官のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の利用をめぐる問題▲韓米自由貿易協定
(FTA)締結による司法権侵害をめぐる問題▲裁判官の役割や姿勢-などについての考えを表明した。
最近、裁判所で巻き起こっているさまざまな問題について、現職の裁判官が実名で意見を述べるのは
事実上初めてだ。
■「裁判官はSNSでも低俗な言葉を使うべからず」
「SNSの利用をめぐる問題」は、フェイスブックに「骨の髄まで親米の大統領」と書き込んだ仁川地裁の
崔恩培(チェ・ウンベ)裁判官が「裁判官にも表現の自由がある」と主張したことが発端になった。
李裁判長は「SNSは社会の発展の触媒にもなり得るが、著名な芸能人を自殺に追い込んだり、裁判官
の「個人情報暴き」に利用されたりすることもある。電光石火のような波及力を有するSNSは、市民に
とっての核兵器という点を否定できず、(SNSが)自浄能力を失えば、憲政の秩序を破壊する怪物になり
かねない」と主張した。
その上で「裁判官がSNSで誤った表現を用いたり、誤った情報を提供したりすれば、瞬く間にそれが真実、
あるいは裁判官全体の見解として市民に受け止められる危険性がある。裁判官個人の表現の自由も尊重
されなければならないが、それによって司法府全体の名誉や信頼にいかなる影響を与えるかについて、
真摯(しんし)に考える必要がある」と述べた。
また、昌原地裁の李政烈(イ・ジョンリョル)裁判官やソウル北部地裁の徐基鎬(ソ・ギホ)裁判官がSNS
で「カッカセッキ・チャンポン(『閣下〈大統領〉』、卑語の『セッキ〈野郎〉』と『長崎』をかけた造語)」や
「チョル麺(歯ごたえのある韓国の麺料理)を注文すると、カッカのピクヨまで食べることになる(怖がって
いたら李明博〈イ・ミョンバク〉大統領の狙い通りひどい目に遭うという意)」といった低俗な表現を用い、
李大統領をからかったことについても「裁判官は私的な領域でも、低俗な言葉ではなく、品位のある
言葉を用いなければならない。たとえ若い裁判官でも、尊敬される大人として、成熟した思考を持ち、
品位ある行動を取る必要がある」と主張した。
■「裁判官が社会の対立を招いてはならない」
李裁判長は裁判官の役割について「裁判は、証拠の調査を通じ、真実を明らかにするとともに、法律を正しく
解釈・適用する過程だ。裁判官は正しい裁判を通じ、社会の対立や紛争を解消し、社会の安定を図る責任
がある」と主張した。その上で「偏った思考を有する裁判官がたびたび登場するようでは、国民は司法府全体
を信頼しなくなり、社会不安を招くことになる。裁判官が社会の対立や紛争を招く火付け役になってはなら
ない」と述べた。
■「司法権侵害の主張は越権行為」
李裁判長は、仁川地裁のキム・ハヌル裁判長が、韓米FTAの投資家・国家間訴訟制度 (ISD)に関する条項
が「司法権を侵害する」と主張し、大法院(日本の最高裁判所に相当)長官に対策を求める建議書を提出した
ことについて「たとえ国民のためを思った行動であっても、憲法や法律で定められていない司法府による意見
の表明は越権行為であり、憲政の秩序を破壊しかねないということを考えるべきだ。逆に立法府や行政府が、
国民のためを思う行動という名目で、司法権の独立を侵すのと、何がどう違うだろうか」と述べた。
李裁判長は2008年、いわゆる「るつぼ事件」(光州市の聴覚障害者向け特殊学校「インファ学校」で発生した、
教職員による児童・生徒に対する性的暴行事件)をめぐる裁判の控訴審を担当した裁判官として知られ、
最近批判を浴びた。李裁判長はこの件について「被害者が告訴を取り下げたため、加害者に執行猶予付き
の判決を下さざるを得なかったが、弱者が大きな苦痛を受けた点について心から反省し、慰めの言葉をかけ
たい」と述べ、謝罪した。
李明振(イ・ミョンジン)記者
朝鮮日報 2011/12/28
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